鈍行列車一人旅

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日本本土最西端の地、佐世保へ

「西日本横断紀行 1~2日目 (新宿~名古屋~高松~下関~佐世保)」

[2013/8/31]

一般的に、鈍行で九州を回るのは北海道よりも難しいといわれる。
東京出発の人々にとって、それは一つの鬼門となる。
西日本以西の夜行列車は寝台特急サンライズを除いて全廃しており、効率よく距離を稼ぐことが出来ないのが現状だ。

ただ、こんな無謀な旅はもう二度としないと思う。
言い換えると、天気の悪いときに遠出するのは無論避けるべきなのだ。
しかしせっかく用意した長期の休みを棒に振りたくはなかったし、僕は端から気にしていなかった。



さて、今回の旅は東京から東海・近畿・中国地方を抜けて九州の地へ向かう。
九州には最西端と最南端の駅があるが、今回は行くのが比較的容易な最西端の佐世保を目標地点とした。
鈍行で2日かけて佐世保に到達したら、長崎、熊本、大分を辿って北九州を順当に進んで戻ってくる予定だ。

早朝に家を出て、常磐線・山の手線と乗り継ぎ旅の起点となる新宿へ向かう。
新宿に着くと急いで階段を下り、人混みをすり抜け11番線ホームへと駆け込んだ。



・中央本線(ホリデー快速富士山) [新宿~大月]
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東京から大阪方面に行くには、定番の東海道線経由か中央線経由に絞られる。
今回は中央線を乗り継いで西へ向かうことにした。
東海道線経由より少し時間がかかってしまうが、山景色の中を進んでいく中央線経由の方が風情があっていい。

旅の出発を飾るのはホリデー快速富士山号だ。車両は臨時列車ではお馴染みの189系。
新宿から中央本線を辿り、大月から富士急行へ直通して河口湖まで行く臨時快速列車である。
今年から世界遺産登録の気運もあって名称が河口湖から富士山に変わり、ロゴも同様に一新されている。

観光客や登山客で賑わう中、富士山号は定刻通り新宿を発車した。
発車寸前に乗り込んだので、座席は全て埋まっている。とりあえずデッキに立って席が空くのを待つ。
立川まで来ると座席が空いたので、すぐに確保した。


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高尾から中央本線に入り、列車は本格的な山間部を抜けていく。
こういう風光明媚な景色には、やはり往年の国鉄型車両が似合う。

富士急行にそのまま直通する列車だが、新宿からSuicaでそのまま入ってきた人が多く車掌さんは車内精算に振り回されている。
富士急行線内はSuicaが使えないため、乗客もそのことを知らない人が多いようだ。
順々に説明していると全く捗らないみたいで、車掌さんも乗客に対して実にフランクに対応している。


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やがてそうこうしているうちに、列車は富士急行と接続する大月に到着。
到着後列車はすぐに発車し、終点の河口湖へ向かっていった。

ここ大月からは鈍行で進んでいくのだが、今回の行程ではここで一度ワープしないと効率よく進めないことになる。
そこで、まずは今から5分後にやって来る特急「あずさ」に乗って一つ先を進む普通列車に追いつかなければならない。



・あずさ7号 [大月~石和温泉]

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特急あずさに乗ってちょっとだけワープ。
普通列車を追い抜いたところですぐに降り、追い抜いた甲府行きの列車に乗って先へ進む。
これだけで、塩尻から先の乗り継ぎ時間を大幅に短縮することができるのだ。
数駅で、まもなく甲府に着く。



・中央本線 [甲府~塩尻]
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甲府からは、塩尻行きの普通列車に乗車。
ボックスシートと車窓に見えるアルプスの山々が旅気分を盛り上げる。



・中央本線 [塩尻~中津川]

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中央線は塩尻からドッと本数が少なくなる。ここから中津川までの区間は乗り継ぎがかなりシビアである。
今回のようにワープでもしないと、塩尻で数時間立ち往生せざるを得なくなるのだ。

車両は2両編成の313系。車内は混んでおり、あいにく座席を確保できなかった。
思うに、この区間は中津川まで乗り通す人がほとんどだろう。
座るのは諦めて、大人しく後ろでかぶりつくことにする。


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この区間は絶景が多く、列車は山と山の間を縫うようにして走る。
一部単線になっていて、行き違いの列車待ちで少し遅れが出る。
結局途中で降りる人もほとんどおらず、ずっと立ったまま約2時間ちょっとで中津川に到着した。



・中央本線(快速) [中津川~名古屋]
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そして、ここからは211系の快速列車に乗って終点の名古屋まで向かう。
車内はガラガラで、誰も座ってないロングシートが侘しく見える。


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やがて、列車は16時35分に終点の名古屋へ到着。新宿から8時間強の道のりであった。
長かった中央本線の旅もこれでおしまいだ。



・東海道本線(新快速) [名古屋~米原~大阪]
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名古屋からは東海道線に乗って、さらに西へ進んでいく。ここからは新快速があるから便利だ。
新快速に乗ってしまえば、あっという間に大阪へ行ける。
座席は転換クロスシートで快適そのものである。

米原からも新快速に乗って先に進む。車両は西日本の223系だ。
以前新快速に初めて乗ったとき、その猛烈な突っ走りぶりに驚いたのを覚えている。
今にも駆っ飛ぶような音を唸らせて、先へ先へとスピードを上げるのだ。


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どっぷりと日も暮れて、列車は定刻通り大阪に到着した。駅前で一服した後、再び西へ進む。
そのまま宿に泊まるのは何か面白くないので、今夜は夜行フェリーに乗って一夜を明かす。
神戸から高松へ向かうジャンボフェリーの夜行便。2等の片道旅客運賃は1800円である。

せっかくだし、ここ大阪からはJR線には乗らず関西私鉄に乗車しようと思う。
大阪から神戸だと、あの阪急電車と阪神電車がほぼ並走して走っている。
個人的には阪急が好きなので、さっそく阪急電車のターミナルへ向かった。



・阪急神戸線(特急) [大阪~三宮]
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阪急電車といえば、阪急マルーンだ。
昔からのスタイルや伝統を頑なに守り続ける阪急の姿勢は、今も根強く支持されているという。
徹底してピッカピカに塗りたくられた塗装も、木目基調の内装もただ素晴らしいとしかいいようがない。

列車は順当に進んでいたが、途中でいきなり急停止。車掌さんいわく「猪と衝突した」という。
いのしし!? まさか猪と衝突するとは。
そういえば、ここは六甲山の近くだ。六甲には猪が住んでいると聞いたことがある。

約10分立ち往生するも、結局何事もなかったかのように列車は再び発車。
その後すぐに、ジャンボフェリーの最寄り駅である三宮に到着した。



・ジャンボフェリー(夜行便) [神戸~高松]

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人気のない駅前通りを歩いて10分ほどで、ジャンボフェリーの乗り場へ着く。
乗船手続きを済ませ、出航時間も迫っていたのですぐに船内へ入る。


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船内ロビーはシャンデリアもあってゴージャスな雰囲気である。
割と混雑しており、雑魚寝スペースは既に確保できない状況だ。
大人しく普通の座席に座り、エア枕を使って仮眠をとる。

しかし船内は常に騒がしい
仮眠をとる人がほとんどだが、しばらくすると売店前で団体客が小宴会を始めた。
まあ、耳栓をすれば問題ない。耳栓・エア枕・クッションの三大神器(?)でその場を凌ぐ。


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早朝5時、ジャンボフェリーは高松港へ到着する。港からの連絡バスに乗って約5分で高松駅へ。
ここで休むつもりはないので、コンビニで朝飯を買ってすぐにホームへと駆け込む。
5時35分発の岡山行き快速列車が待っている。



・瀬戸大橋線(快速マリンライナー) [高松~岡山]

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高松からは、瀬戸大橋線の快速マリンライナーに乗車。
先頭に二階建て車両の5000系(グリーン車)と、普通車として西日本の223系が併結されている。
5000系はなかなか凛々しい顔つきをしている。グッドデザイン賞にも選ばれたらしい。
かつて1両だけ存在した、常磐線415系の二階建て試作車をブラッシュアップしたような感じだ。


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坂出を過ぎると、列車はすぐ瀬戸大橋に差し掛かる。空は一面曇り空で、残念ながら見通しはかなり悪い。
しかし橋を渡り始めたところで、分厚い雲と雲の隙間から僅かに日の光が差し込んできた。


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今にも消え入りそうだが、橋上の車窓で陽光は生き物のような表情を見せる。
やがて数分後、尾を引くようにして雲の中へと掻き消えていく。
再び日の光が見えなくなると、列車は絶妙のタイミングで瀬戸大橋を渡りきった。

6時28分、快速マリンライナーは定刻通り岡山に到着する。
ここから山陽本線に乗って西へ進み、下関からはJR九州の路線を乗り継いでいく。
天気はこれから荒れるらしい。元々台風だった温帯低気圧の最中を行くことになる。
行程通りにいけば、今日中には最西端の佐世保まで行けるはずだ。

早朝の岡山駅構内は閑散としている。
僕はおにぎりを食べながら、約10分後に来る岩国行き普通列車を待った。



・山陽本線 [岡山~岩国]
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数分後、入線してきた115系は想像以上に衝撃的な柄を纏っていた。
その名も「まんぷく宝しま号」。広島の観光PRキャンペーンの一環で企画された期間限定列車だ。
各車両ごとにラーメン・お好み焼き・酒倉などのデザインが施されており、塗装は片側ごとに異なっている。
また仕入れたてのキャベツや雑然と並ぶ酒の空ビンなど、店先のディテールが忠実に描かれているのも面白い。

6時57分、岩国行き普通列車は定刻通り発車した。
しばらくすると雨風が酷くなってきたが、特に遅れもなく突き進んでいくので実に頼もしい。


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本郷駅を過ぎると列車は山間に入り、巨大な広島空港大橋をくぐり抜けていく。
アーチに濃霧が絡みついて神々しい姿を見せる。


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岡山から約4時間経ち、まんぷく宝しま号は定刻通り終点の岩国に到着した。
道中天候が荒れに荒れたが、それでも寸分の狂いもなく走り抜いた宝しま号に拍手を送りたい。
次に乗る下関行き普通列車は20分後に発車する。



・山陽本線 [岩国~下関]
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さて、11時9分発の下関行き列車がやってきた。ここからさらに3時間強の道のりだ。
弁当を買って意気揚々と乗り込む。雨はもう止む気配がなく、これからもっと酷くなるのだろう。


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岩国を出るとしばらく瀬戸内海沿いを走っていくが、車窓は絶望的なほどに何も見えない。


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ぼんやりした車窓に少し眠くなってきてしまう。念のため冷房冷えしないように上着を着込む。
そのままうつらうつらしたまま時間が過ぎていき、やがて列車は定刻通り下関に到着した。
下関から、遂にJR九州の区間へ入る。まずは関門海峡を越えなければならない。



・山陽本線 [下関~小倉]

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奇遇にも、久しぶりに415系鋼製車との再開だ。
高校時代毎日お世話になった415系をここで再び見られるのは、なかなか感慨深いものがある。
数年前まで常磐線の主力だった鋼製の415系だが既に全車引退済み、残るはJR九州所有の車両のみだ。

関門トンネルで直流から交流に切り替わるため、この区間は交直流対応の列車のみが走る。
デッドセクションを越えるためだけの便なので、トンネルを抜け鹿児島本線に入ったらすぐに終点となる。



・鹿児島本線(快速) [小倉~鳥栖]

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小倉からは鹿児島本線の快速列車に乗車する。車両は落ち着いたデザインの811系。
長崎本線と接続する鳥栖まで、約2時間弱の道のりだ。

九州に入っても、雨は降ったり止んだりを繰り返している。
初めて来た九州の地の風景に新鮮さを感じつつも、寝不足が祟り再び眠り込んでしまう。


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そして不覚にも寝過ごしてしまい、列車はいつの間にか鳥栖を過ぎていたのだった。
このままではマズイ、、、!とりあえず久留米ですぐに降りて、反対から来た列車で鳥栖へ向かう。
車内で慌てて時刻表を開く。どうも一区間だけ特急でワープすれば、本来乗るはずの普通列車に間に合うみたいだ。
ということで、急遽鳥栖から特急に乗って佐賀までワープすることに。



・みどり19号 [鳥栖~佐賀]

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鳥栖での乗り継ぎ時間はほぼ0である。列車を撮影する間もなく、急いで車内へ駆け込む。
車両は、当時一世を風靡した「ハイパーサルーン」の783系だ。
鳥栖から僅か15分程で佐賀に到着。追い抜いた長崎行き普通列車を待つ。



・長崎本線 [佐賀~肥前山口]

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もう夕方なので、駅構内に学生の姿が目立ち始める。数分後やってきた車両は2両編成の817系。
車内はそれなりに混雑し、終点までドア脇に立って凌ぐ。



・佐世保線 [肥前山口~早岐]
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肥前山口からやっと、本土最西端駅へ向かう佐世保線に入る。
まず早岐行きの列車に乗り、早岐からは佐世保行きの列車に乗って進む。



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817系は座席が斬新すぎて驚いた。木製のシートに本革が張られている。
よく見ると壁際に窪みが設けられていて、それが肘掛けの役割を果たすという気配りも見られる。
ドア付近のつり革が円形に配置されているのは、実用的にも○だと思う。

日もすっかり暮れて、列車は大村線と接続する早岐に到着。
ホーム向かい側の気動車にすぐ乗り換える。



・佐世保線 [早岐~佐世保]

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最後の最後に乗る列車は、佐世保行きのシーサイドライナーである。早岐から僅か数駅で佐世保に到着となる。
ここまで来ればもう大丈夫。あとはただ列車に揺られながらぼんやりするだけだ。



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やがて、列車は遂に終点の佐世保に到着する。
東京から約36時間、あらゆるものを駆使しての到達となった。
ややルートから逸脱したものの、行程通りに着いた瞬間というのは本当にたまらないものがある。



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佐世保駅はJR線で日本最西端の駅となる。
しかし本当の最西端は、ここからさらに延びる松浦鉄道のたびら平戸口駅だ。
ただ、佐世保の方が駅名も含め最西端としての風格を持っている気がするのである。
また本土以外も加えると日本最西端は沖縄都市モノレールの那覇空港駅となるが、
東京から鉄道だけで達することはできないため鉄道旅として行程に加えるのは不可能だ。

駅前を一通り観察した後、とりあえず繁華街へ赴き名物の佐世保バーガーを食べた。
すっかり体力を使い果たしていたので、晩飯を食べたらすぐ宿に直行する。


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天候は荒れたが、道のりは至って順調に進んだのがよかった。宿に着くと心底ホッとした。
しかし天気予報を見て愕然とする。小規模とはいえ、再び別の台風が九州に近づいてきていたのだ。
旅の中で二度も台風に巻き込まれるとは思わなかったが、とりあえず来るべき試練に備えて潔く就寝した。

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