鈍行列車一人旅

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只見線を日帰りで行く (後編)

「只見線日帰り強行旅 2/2 (只見~会津川口~会津若松~郡山~黒磯~宇都宮~大宮)」

[2016/4/22]

余談だが、只見は"柏の姉妹都市"だそうだ。何故かは知らないが、一応そういうことになっている。
柏に対抗意識を持つ松戸市民としてはちょっと腑に落ちないところがあるが(笑)、
ともかく、私は早朝から鈍行に乗って只見までやってきた!

大宮から日帰り鈍行で只見線を制する旅も、ようやくターニングポイントに差し掛かる。
只見からは鉄道が不通状態なので、代行バスに乗って先を進もう。



・只見線 (代行バス) [只見~会津川口]
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2011年夏の豪雨被害で、未だ復旧の目処が立っていない只見線の只見~会津川口間だが、
不通になってから代行バスが設定されており、全線通しで行くための手段が確保されている。
純然たるJRの代行バスなので、18切符やその他フリー切符でも乗車可能だ。
本数は鉄道と同等の少なさであり、乗り継ぎ時間を事前に確認しておいた方がいいだろう。

代行バスの経由するルートは、只見線の線路と並行する国道252号だ。
奥会津の生命線といえる国道である。只見~会津川口間を車で行く場合、この国道を除いて全く選択肢がない。
只見到着後、声をかけてきた駅員さんに導かれて駅を出ると、目の前にマイクロバスが停まっていた。
残り二分ほどで出発するらしかったので、大人しく乗り込む。乗客は私含めて二人だけ。

運転士は地元??の女性の方だろうか。「今日は二人だけみたいですねぇー」と、
駅員さんとこなれたやり取りが行われた後、バスは定刻通り只見を出発する。


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国道252号は只見線とずっと並行しているので、バスの中から置き去りにされた線路が見える。
見た感じ、不通以来、何も手が加えられてなさそうだ。錆び付き、朽ちてしまっている。
ボロボロの線路と対比して広がるのは、日本の原風景といえる奥会津の景色だ。

復旧の目処が立ってないというのは、こうして実際に眼にして、正に"言葉通り"なんだと知る。
今のJRの消極的な姿勢からみると、復旧の可能性は正直言って限りなく低い。絶望的である。
「廃線にしたい」ってのがJRの本音なんだろうが、それで地元は納得しないだろうな。


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途中駅の最寄バス停へ順々に停まっていく代行バスだが、特に乗り込んでくる乗客はいない。
バスの車窓から見えるのは、際どいところに敷かれた只見線の線路と、広大な只見川。

背後の山が牙を向けば、あっという間に途切れてしまいそうな鉄路が見える。
この区間の只見線は、幾つものシェルターと橋梁によって成り立っていたようだが、
その全てが放置されて露のままになっている。美しい景色の中にも無情な現実があった。


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どうやらウェザーニュースの予報は半ば当たったらしく、空は晴れの兆候を見せつつある。
絶望から希望へ!ブラザー俺はお前を信じてよかったよ。

只見からは、会津蒲生~会津塩沢~会津大塩~会津横田~会津越川と、会津まみれの駅が続いている。
実際、只見線の時刻表を見ると「会津」が多すぎて何が何だかわからなくなってくる。
全36駅のうち「会津」を冠した駅が17駅!会津推し感がぱねぇ。




本名ダム上の橋を渡るところで、無残にもプッツリと途切れた只見線の橋梁が見えた。
あんなところにまで豪雨の猛威が及んで、橋がまるごともぎ取られてしまったんだと思うと……!
恐らく、手前のダムから尋常じゃない量の大水が押し寄せてきて、全部持ってかれてしまったんだろう。

生々しいとしかいいようがない。よく見ると、橋の根元に激流の禍々しい痕跡が残っている。


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国道を延々と走り、代行バスは会津川口へ到着した。バス到着が15時22分で、次の列車の発車が15時27分。
只見に続き、乗り継ぎ時間が少ししかなく、僅か5分のうちに乗り継がなければならない。
効率良く乗り継げるからいいけど、もうちょい余裕ある時刻にしてほしいなぁ。

バスを降り、すぐに改札を通って、只見線の乗り場へ向かう。
川のすぐ横にホームがある。会津若松行き鈍行がエンジンを唸らせて出発を待っている。



・只見線 [会津川口~会津若松]
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風光明媚な只見線の中でも一番華やかなのが、これから行く会津若松側の区間である。
紅葉シーズンになると観光列車やSLが走る当区間は、小出側と比べて列車の本数が多いようだ。
ただ、多いといっても1日6~7本なので、途中下車は難しい。基本通しで乗るのが無難だろう。
会津川口~会津若松間の所要時間は二時間弱。"あのCM"に出てくる有名な橋も、この区間にあるらしいぞ。

小出側と同じく、二両編成の国鉄気動車。只見線といえば、この”白地×緑"の気動車である。
前側の車両がオールロングシートで、後側の車両がボックスシートになっている。
車掌は相変わらず健在。合理改革の匂いが全くしないのが凄い。


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聞こえてくるのは、風の音と、古ぼけた気動車の音だけだ。

駅のすぐ横は只見川が流れていて、満々と水を湛えている。
こんな風景、眼の前に差し出されて、ボキャブラ難民の私は何て言ったらいいんだ??
「素晴らしい」としか言いようがないじゃないすかこんなん。なんもいえねぇよ。

たまらない。ローカル好きにはたまらない景色だ。しかし悲しいかな、出発まで残り2分という現実が横たわる。
「せめて10分だけでもココにいさせて(はぁと)」なんてワガママは、只見線には通用しない。
仮にもこの列車を逃したら、次来るのは3時間半後である。極端すぎるっちゅうねん!




ボックス席に一人ずつ良い塩梅に埋まったところで、会津若松行きは定刻通り出発した。
今乗ってる列車に冷房は付いてるのだが……数年前まで只見線は非冷房だったらしく、
その頃の習慣が残ってるのか、地元の学生が普通に窓を開けている。
さっそく私も窓を開け放ってみた。東京ではこんなこと絶対に出来ない。

会津川口から、列車は只見川の畔をひた走っていく。すぐ下は川だ。少し左にズレれば落ちそうなほど近い。
風景を遮るフェンスとか、そういうのも一切無いようで、左手に開放的な景色が広がる。
川辺に張り付く集落が見えてくると、列車は一旦只見川のもとを離れた。


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ここは越後山脈の真っ只中であり、見渡すばかり山しかない。
旅中、私はスマホで位置情報を確認するのだが、地図上に表示されているのは、
どう見てもマイナーなありとあらゆる「山」と、只見川と、只見線と、国道252号だけだ。

一本ずつの川と国道と鉄路が、夥しく聳える山の中を縫うように進んでいる。
なんて過酷で極端な場所なんだろうか。


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深い渓谷の底を縫って走る。小さな集落の真っ只中にも深い谷があって、川が流れている。
宮下集落を抜け、大谷川と只見川を渡ると、列車は会津西方へ。
ここから、列車は隧道を潜りながら勾配を上っていく。

会津西方から会津桧原の間で、例の有名な橋「第一只見川橋梁」を渡った。
夏になると、ここ一帯の只見川は川霧に包まれることが、しばしあるという。



「第一只見川橋梁の車窓 (オンマウス:滝谷川橋梁の車窓)」

会津桧原を出るとちょっとした峠を越え、トンネルを出てすぐのところで滝谷川を渡る。
ここの橋、高度感がすごい。川どころか針葉樹すらも下に見下ろしながら、列車は通過した。

滝谷からは山の裾の際どいところを辿るようにして進んでいくが、あまり眺望は良くない。
再び上り勾配に差し掛かり、エンジンを吹かしながら列車は高度を上げる。
木々の隙間から、雄大な景色が見え始める。


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ずっと川沿いを行くのかと思いきや、只見線はバリバリの山岳路線だったのだ。
鬱蒼とした山の中を抜けると只見川が近づいてきて、列車は郷戸へ到着。
郷戸からは素朴な風景の中を走っていく。




会津坂本が近づくと、沿線に人家が増えてきた。
秘境地帯は既に抜けた印象だが、この辺りでも相変わらず高いところを走る。
会津柳津の駅前には、昔、只見線を走っていたと思われる"主"が静かに佇んでいた。

ずっと並行していた只見川は会津坂本を出たところで遠ざかり、車窓から見えなくなってしまう。
山林の中へ入り塔寺を出ると、列車は七折峠に差し掛かり、急勾配を下っていく。




塔寺から奥会津を脱した列車は、地続きで想像以上に高い地点を通って、
左手に会津の街並みを見下ろした後、山の腹を辿って会津盆地へと駆け下りる。
この間、僅か数分。たった数分で、列車は峠を抜けて盆地へ降りてきてしまった。

会津盆地へ下りてすぐの会津坂下で、地元の学生がドッと乗り込んできた。
ガラガラだった車内が満員状態に。空は何時の間にか晴れ渡っている。


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会津坂下からはU字型に進路をとり、遠くに山々を見渡しながら田園をひた走っていく。
みるみるうちに人家が増えてくると、列車は会津鉄道と接続する西若松へ。
ここまでくれば、会津若松は目と鼻の先だ。

七日町を出たところで、終点到着のアナウンスが入る。
特に何のトラブルもなく、定刻通り、ホームへと滑り込んだ。



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会津若松、到達!!

17時20分、列車は終点の会津若松に到着する。小出から4時間強に及ぶ只見線の旅が、無事終結した。
学生に混じってホームへ降り立つと、辺りは夕暮れの中。鬼畜な日帰り旅は佳境を迎えつつある。
乗客を降ろした気動車は、何故か「野沢」という行先を掲げて、すぐに走り去ってしまった。

今の時間、野沢行きなんて列車は無かったはず。運転士さんがミスったのかな??
だとしたら……お茶目だな!(笑)




「なんで今まで乗らなかったのか」ってほどに、只見線は素晴らしい路線だった。
完乗してすぐだがリピート確定。次は、真冬の日に訪問したいなーって思う。

かれこれ、鉄道で3回訪れている会津若松。東京からギリギリ日帰りで来れる場所である。
ここからは帰路だ。大宮まで、鈍行を延々と乗り継いで帰らねばならない。
自宅到着は夜24時半。エグイ!キチーけど最後まで頑張ろう!

会津若松の滞在時間は約50分。今日中に夕食にありつける最後のタイミングである。
一旦改札を出て駅そばを食した後、私は磐越西線の鈍行を待った。



・磐越西線 [会津若松~郡山]
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歴史の古い磐越西線で、まずは郡山へ。大宮まで5時間、自宅まで実質6時間強の道のりが幕を開ける。
18時12分発の郡山行き鈍行は二両編成で、ロングシートとクロスシートが混ざった構成。
次第に立ち客が出てきた時点で、列車は会津若松を発車する。

この区間の磐越西線の道のりは特徴的で、会津若松からS字の急カーブを何度も繰り返して進んでいく。
如何にも「地の利を活かしました」って感じの線路の敷き方だが、これは高度を稼ぐためだ。
旅は佳境だが、空も佳境を迎えつつあった。

急カーブを下る中、磐梯の山々をバックに、陽が真っ紅に染め上がっていく。



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ブラザァァァァアアアアアーーーー!

曇りの予報を出す気象庁を覆し、今日、ウェザーニュースの予報は大どんでん返しを起こした。
乗客一同が釘付けになるほど、空が真っ紅に染め上がっていた。

なんなんだコレは……!こんな現実離れした夕日、初めて見たぞ。





ナアナアのままに終わりそうだった日帰り旅なのに、当の車窓はデレデレだ。吸い込まれそう。
アート設定とか着色を施したわけでもないのに、カメラに収まったのは奇跡的な夕景。
「美しすぎる!」っていう大げさな表現を抜きにしても、リアルを前提にしても、
今日の夕日は何だか言葉にならない……ふつくしい……!

S字カーブを抜けたところでファンタスティック夕景は途切れてしまい、真っ暗になってしまう。
あとは、車内でひたすら耐え忍ぶのみとなった。



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ウトウトするうちに列車は郡山へ。郡山からは、東北本線を乗り継いで南下しなければならない。
水郡線の水戸行き最終列車は既に出てしまっているので、頼れるのは東北本線のみだ。
黒磯行きの乗り場へ向かうと行列が出来ていた。学生や仕事帰りの人で一杯である。
ホームの端から端まで、人、人、人。数時間前は人すら見かけない秘境地帯にいたってのに。

行列の中で色々考えてるうちに、東北本線と磐越東線の列車がホームへ入ってきた。
「うちらの電車もああいう豪華なのにしてくんないかなぁ……座りたいよぉ」
サブカル女子大生が、磐越東線の気動車を見て自虐気味に呟く。
通勤・通学帰りの気だるい空気が、満杯の人の中で拡散していく。



・東北本線 [郡山~大宮]
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満員状態で郡山を出た黒磯行き列車は、数駅過ぎるごとに乗客が減っていった。
最初はドア脇に立っていたが、あっという間に空いてきたので座席は難なく確保。
新白河で大多数の地元客が降りていき、ガラガラになったところで列車は黒磯に着く。

若干くたびれながら長い跨線橋を渡る。向かい側のホームで宇都宮行き鈍行が待っている。
黒磯を境に東北本線の表情は一変するから、私は黒磯での乗り継ぐ手間が好きだ。




広い駅構内を持つ黒磯駅。少しずつ通勤風味を増してきたが、21時前なので人影はまばらである。
並行する新幹線を尻目に地に足据えて出発を待つ。それが鈍行の宿命なのか。
もちろん車内はガラガラ。ロングシートに居座ってやり過ごすことに。

20時52分、宇都宮行き列車は黒磯を出た。早朝の出発から既に15時間近く経っている。
ガラガラの車内に、酒と柿ピー片手のリーマンがちらちらと。夜の常磐線となんも変わらないw


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21時44分、列車は定刻通り宇都宮へ到着。ここでようやく上野行きの列車に乗り込む。
上野行きにありつけばこっちのもの!行先に上野ってあるだけで安心するから不思議だ。
15両編成の通勤電車で、車内は空気状態。夜遅くの上り列車なんて大体こんなもんである。

クロスシートでぐったりするうちに、あっという間に時間が過ぎていく。
ぶっちゃけ、もう書くことがない。ネタになる以前に、ただの帰路同然と成り果てた。




会津若松から1時間20分、郡山から1時間、黒磯から50分、宇都宮からさらに1時間20分の道のりを経て、
23時を過ぎたところで、上野行き列車は大宮へ到着する。

大宮から大宮へ総距離600km!17時間の鈍行旅に、終止符が打たれた。



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(二度とやらんけど)普通に楽しかったです。

大宮到着は23時11分。何もトラブルに巻き込まれることなく、私は大宮に帰ってきた。
夜も人で一杯の巨大ターミナルを眺めていると、17時間なんてあっという間のようにも思えた。
明日から、何時もの生活に戻るんだ……。やだなー。でも、日帰りだから気分はこざっぱりしてる。
大宮からは京浜東北と武蔵野線に乗って24時半に帰宅。翌日、私は眼を擦らせて何時もの日常に戻った。

・旅の総運賃:11830円(北海道&東日本パス+グリーン車代)
・乗った乗物の数:鈍行9本+代行バス1本
・総距離/所要時間:約600km/17時間


キツイけど、普通に成功した鬼畜の日帰り旅。金無くても"体力"さえあれば何時でもやれます。体力無かったら地獄確定。
今回の強行訪問で、只見線は「乗るだけでも価値のある路線」だと確信した。言い過ぎじゃない…と思うよ。
いざ18切符を手に、運賃2370円/片道17時間の"鈍行ロマン"を、掴み取ってみては如何だろうか。

旅を終えた後、知り合いに話したら爆笑された。「お前馬鹿だろww」当たり前だ。
(完結)
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