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森吉山麓紅葉号に乗って

「秋田ローカル鉄道旅 2日目 (角館~鷹巣~弘前~新青森~東京)」

[2015/10/17]

「がんばれ♥がんばれ♥」

……これから乗る秋田内陸縦貫鉄道の路線は「あきた♥美人ライン」という愛称が付いている。
愛称に付される「♥」(はぁと)はもちろん正式な表記であり、私が悪ノリで勝手に付したものではない。
この愛称は2012年に公募によって決められたのだという。尚、上に付した伊東ラ○フの一節とは全く関係ないんでよろしこ!


Singles Going Steady

「途中下車するのは~♪無人駅~♪」

さて、のっけからふざけ気味で始まった秋田ローカル旅記事の最終回。まずは上の"参考動画"を見てほしい。
かのAKBから演歌歌手として新たに躍進を果たした、岩佐美咲の2012年発ソロデビュー曲「無人駅」である。
侘しい無人駅を題材にしたこの曲のプロモーションビデオの舞台となっているのが、これから乗る秋田内陸線なのだ。

秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線。角館から秋田の内陸真っ只中を縦貫し鷹巣までを結ぶ、第三セクター鉄道路線である。
全長100km近くにも及ぶ同路線は、かつて国鉄時代においては二路線(阿仁合線・角館線)に分断されていた。
意外にも千葉県流山市出身の岩佐美咲(千葉北西地元民歓喜!)の熱唱を存分に味わったところで、
元々は国鉄が運営していた秋田内陸線の大まかな歴史とルーツを、以下で振り返っていこう。




鉄道建設の全ての大元となる鉄道敷設法によれば「秋田県鷹ノ巣ヨリ阿仁合ヲ経テ角館ニ至ル鉄道」として定められ、
阿仁鉱山からの鉱石を運ぶための鉄道として、1934年にまず鷹ノ巣から線路を延ばして阿仁合線が開業した。
現行の秋田内陸線の鉄路を形成する第一歩だ。この阿仁合線は戦後になると比立内まで延伸された。
阿仁合線の開業に続き、70年代に入ると、角館からも線路が延ばされ角館線(角館~松葉)が開業する。

この南北の二路線は、後に一つの路線となって繋がる構想だった。しかし、その夢は国鉄時代には叶えられずに終わった。

80年代に入ると国鉄はジリ貧となり、地方ローカル線を特定地方交通線に指定して次々と廃止・転換していったのだが、
阿仁合線・角館線も例外でなく特定地方交通線に指定され、進んでいた未開業区間の工事が凍結してしまったのである。
しかし、地元の存続に対する熱意は負けなかった。そのまま分断されたまま廃止になろうかと思われた矢先、
両路線は新たに三セク鉄道「秋田内陸縦貫鉄道」として運営されることとなった。1986年に三セク転換が行われ、
凍結していた未開業区間の延伸工事を再開。かくして1989年、かつての構想どおり全線が開通し秋田内陸線は誕生した。

全通から四半世紀のときが経過した今、秋田内陸線はギリギリの経営状態ながらも秋田の名物として健在している。
こじんまりとした角館駅舎内で片道全線切符を購入し、私は秋田内陸線の臨時列車のもとへ向かった。
小さな乗り場に停まっていたのは、少し年季の入った二両編成の気動車だ。



・森吉山麓紅葉号 [角館~鷹巣~弘前]
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森吉山麓紅葉号は、秋田内陸縦貫鉄道が毎年秋に限定運行している臨時快速列車である。
地元秋田の紅葉盛りとなる10月の土休日に増発されるこの列車は、奥羽本線の弘前を起点として、
鷹巣を経由し秋田内陸線の全線を走破する直通列車だ。コレに乗れば弘前~角館間を一本で行くことができる。

秋田内陸線の列車の本数は非常に少なく、その多くの列車が阿仁合を起終点としている。
現時点で全線を走り切る鈍行は往路復路とも1日4本のみ。旅行の行程に組み込むにはなかなか厳しいダイヤとなっている。
今から乗る復路の森吉山麓紅葉号は、14時41分に起点の角館を出発し4時間弱かけて終点の弘前へ向かう。
列車種別は「快速」となっていて、急行料金は一切必要ない。色んな意味で大盤振る舞いの見本のような列車である。

使われる車両は先頭部が流線形になっている二両編成の気動車で、車内は手堅い転換クロスシートがズラッと並ぶ。
車内中央部にはサロンスペースもある。以前は急行にも使われていたこの車両は、現在は臨時列車のみで使われているという。
予想以上に閑散とした中で列車画像を確保した後、私はソロソロと流線形の気動車に乗り込んだ。


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森吉山麓紅葉号の車内はこんな感じ。秋田内陸線全通から走り続けてきた車両で、内装はそれなりに年季が滲み出ているが、
私は寧ろ、その長年の年季が醸し出す味が好きなのだ。座席も先ほどのJRの電車とは比較にならない快適さ。
やがて定刻がくると手堅いディーゼルエンジンを唸らせ、復路の森吉山麓紅葉号は角館を出発した。

列車は角館を発すると田沢湖線と分かれ、一路北上する。角館を発してしばらくは、右手に奥羽山脈が聳える。
紅葉列車らしく、これぞ秋田の佇まいといった女性アテンダントが車窓を詳細に案内してくれるが、
そのアテンダントさんによると、これから内陸線は標高300mの地点まで上っていくらしい。


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往路はどうだったのかわからないが、復路の紅葉号は今のところガラガラである。
アテンダントさんの車窓案内は、これまで出くわしてきた中でも一番上手いかもしれない。
どちらかというと堅苦しい印象を持つ観光列車の車窓案内だが、内陸線の案内は凝っていて言い回しが心地よい。
ただマニュアル通りに決められたフレーズを言うのではなく、"人の力"がこもっている。

角館から三駅隣の八津で対向列車待ち合わせのため、数分停車。
こっちはガラガラなのに、対向から来た単行気動車はめちゃくちゃ混雑していたからびっくりした。


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八津から内陸線は鬱蒼とした山あいに入り、両側には紅く染まった山々が見えてきた。
旧角館線の終着駅だった松葉を過ぎ、並行する桧木内川と何度も交差しながら列車は秋田の山間部へと入っていく。

松葉からしばらく先は、紆余曲折の果てに開通した新線区間だ。
戸沢を出ると列車は市境の峠を貫く十二段トンネルに入る。県内最長のトンネルである。
この十二段の長大トンネルを抜けると、列車は阿仁マタギに到着。この辺りから山々の紅葉が素晴らしくなってきた。


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どうやら、紅葉号では専属のアテンダントさんによって車内販売が行われるらしい。
完全に旅費が限界だが、ここで何も買わないわけにはいかないし、何というか流れ的にマズイ。
取り敢えず私はりんごのお菓子を一つ買うことにした。県内産のりんごを使ったノンフライチップスだ。

「すいません、実はもう帰りの新幹線の分しか旅費が残ってないんですよー、ハハハ……」
「そうですか、大変ですね~。……何処からやって来られたんですか??」
「東京から来ました。明日から仕事なので、今夜新幹線で東京に帰ります」
「そうですかー、これから先で紅葉が綺麗になってきますので、楽しんでいって下さいね~」

おしとやかというよりも奥ゆかしい佇まいのアテンダントさんは、東京では絶対に醸し出せない雰囲気を纏っていた。
普段タメの女友に「そんなんだからあんたはずっと○○なんだよ!バーカバーカ!」とか罵られる者としては、
ちょっとした心遣いだけでもあったけぇ気分になれますわー。沁みますわー(涙目)。


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何時の間にか並行する川は渓谷へと姿を変え、風光明媚な景色が展開する。
奥阿仁を出てしばらくしたところでは、列車は内陸線屈指の名物である比立内橋梁を渡る。
観光列車らしく橋梁に差し掛かるとゆっくりと徐行し、右手には渓谷の絶景が広がった。

比立内橋梁の絶景を過ぎると、列車は旧阿仁合線の終着駅だった比立内に到着する。
ここで再び対向列車待ち合わせのため数分停車となった。
比立内からは旧阿仁合線の区間へ入る。渓谷の脇を縫うように進み、
もう一つの名物として知られる大又川橋梁に差し掛かると再び徐行。右手に現れたのは二重の道路橋が重なる絶景だ。


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なかなか、渋い"構図"ですわな!

眼下を流れるのは風光明媚な阿仁川。内陸線最大の景勝地として、この橋梁の景色は広告でよく使われるという。
鉄路と同じ高度で架かっているのが国道105号で、その下に架かってるのが国道以前から存在する旧道である。

ちなみにこの国道105号をひたすら南へ辿っていくと、先程訪れたゆりてつの起点である羽後本荘へ行くことが出来、
さらにその羽後本荘から接続する国道108号を南へ辿れば、昨日訪れた陸羽東線の鳴子温泉へ行き着くのである。
前記事から引っ張り続けてきた国道ネタを(無理やり)結実させたニッチなセンスを誰か褒めてほしい(笑)。


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どうやら、復路のアテンダント常務は阿仁合までらしい。
二つの名物橋梁を過ぎいくつか駅を過ぎると、列車は運行拠点となる阿仁合へ到着。
「ありがとうございました~」とアテンダントさんが別れの挨拶を華麗に交わし、列車を降りていった。

16時過ぎ、数分だけ停車した後、紅葉号は定刻通り阿仁合を出発する。
阿仁合から列車は阿仁川のすぐ脇を走り、左手にひたすら川沿いの風景が広がるようだ。


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ここまで来ても、車内は相変わらずガラガラ。
アテンダントさんがいるといないとでは、やっぱり車内の雰囲気がガラッと変わる。
華やかな紅葉列車というよりは哀愁のローカル列車だ。車窓案内もなく淡々と川沿いをひた走っていく。

阿仁前田で観光客が3人だけ乗り込んできた。
車窓左手に広がる雄大な阿仁川の景色は、宗谷本線の天塩川とシンクロするものがある。
あの孤高にして唯一無二の宗谷の鉄路を想起させるとは……、秋田内陸線の車窓はなかなか懐が深いぜよ!


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阿仁前田からも阿仁川沿いの風景が続くが、米内沢を出たところで列車は川沿いを離れた。
米内沢からは人家が多くなってきて、素朴な平野の中をひた走りに走っていく。
合川で対向列車待ち合わせのため数分停車。対向の鈍行は地元の学生客で埋まっていた。

ここまで来れば、内陸線の道のりもあと少し!
終点すぐ近くでは、夕日が山に没する瞬間が拝めた。正に絶好のタイミングだ。


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16時53分、奥羽本線と合流すると列車は秋田内陸線の終点鷹巣へ到着となる。
紅葉号はこの先で奥羽本線に入り終点の弘前へと向かうが、線路や列車の運用の都合上、
内陸線は奥羽本線にすぐ直通ができない。そのため、この駅では30分強かけて列車の入替作業を行う。

鷹巣(JR側の表記は鷹ノ巣)に列車が到着すると、まず内陸線のホームに入線して降車客を降ろした。
内陸線のホームで数分停車した後、列車は一旦バックし内陸線の線路上で長時間停車する。
線路内で10分ほど停車した後、列車は奥羽本線の線路に入りJRのホームへ入線した。
あとはこのまま奥羽本線を進み、終点の弘前を目指すのみである。


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紅葉号は鷹ノ巣を定刻通り発車すると、日が暮れすっかり真っ暗になった中を駆け抜ける。

外はもう何も見えなくなってしまったので、私は今日最後の食料となる駅弁を食べることにした。
車窓を眺めながら食べるのが乙だが、私の場合、日中はレポに全てを注ぐため食べる時間がない(メタ発言…)。
あきたこまち弁当。シンプルな幕の内弁当だが、下手に凝ってるより気を衒わない弁当の方が個人的には好きだ。


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17時45分に列車は大館に到着。向かいのホームには花輪線の鈍行が停まっている。
名ばかりの快速が横行する作今だが、紅葉号は最初から最後まで停車駅が少なくて良い。
碇ヶ関の到着は18時06分で、18時16分に大鰐温泉を出た。4時間弱の長い道のりもあと少しだ。

この区間の奥羽本線は普段、JRのロングシート電車で耐え忍ぶ乗り鉄泣かせの区間であるが、
今乗ってるのは内陸線が誇る快適な気動車である。その手堅い走りを今回は存分に味あわさせて頂いたぞ。


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「弘前、到達!!」

18時28分、森吉山麓紅葉号は定刻通り終点の弘前へ到着した。
どうせなら青森まで走ってほしいが、森吉山麓紅葉号の役目はここ弘前までだ。
約10分後に発車する青森行きの列車に乗るため、紅葉号に別れを告げた後、私は3番線乗り場へ向かった。

秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線の車窓で展開したのは、実に懐の深い山岳路線としての景色だ。
秋田の内陸の険しさは伊達ではなく、峠を長大トンネルでぶち抜いた先には想像以上に深い渓谷があった。
存廃論も飛び交う秋田内陸線だが、あの風光明媚なローカル車窓が見れなくなるのはもったいない。
行く先厳しい経営状態が続くと思うが、何とか存続していけないものかと願うばかりだ。



・リゾートしらかみ5号 [弘前~新青森]
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弘前からは、まさかのリゾートしらかみ号で新青森へ向かう。今回の秋田ローカル旅の行程最後を飾る列車である。
18時42分に弘前を発するリゾートしらかみ5号は、4両編成の気動車。秋田から五能線を経由して遥々やってきた奴だ。
派生列車のリゾートみのり号と同じく座席はシートピッチの広いクロスシートで、憩いの展望スペースもある。
弘前から青森までの所要時間は40分ぽっきり。最後の最後のおまけ行程だが、コレが結構馬鹿にならない。

車内はガラガラであり、1号車には私を含めて僅か二人しか乗ってない。
真っ暗闇の中をひた走り、やがて40分後に列車は東北新幹線と接続する新青森へ到着する。
リゾート列車に始まりリゾート列車に終わるという、贅沢な臨時列車三昧の行程を無事全うした。



・はやぶさ38号 [新青森~東京]
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「東京へ、帰るべさ!!」(↑この角度だと新幹線ってイルカみたいな形してるよなww)

19時44分発のはやぶさ38号は、新青森を発する東京行きの最終便だ。この列車は盛岡まで律儀に各駅へ停車する。
実は帰路については夜行バスを利用しようと思っていたのだが、予想以上に疲れてしまったのでやむなく新幹線を選択。
数年前までだったら「あけぼの」に乗る選択肢もあったが、今はそうもいかない。専ら新幹線に頼るしかないのだ。

休日の行楽客とすっかり腹ペコになった私を乗せて、東京行きの最終はやぶさ号は一路東京へ向かった。

・旅の総費用:38920円(秋の乗り放題パス+指定券代+新幹線運賃+三セク運賃+バス運賃)
・乗った乗物の数:鈍行7本+快速3本+バス1本+新幹線2本
・総距離/所要時間:約600km/1泊2日


それなりに費用(主に新幹線代)がかかってしまったが、今回の秋田ローカル鉄道旅は例に漏れず大成功となった。
コンセプト的にも良い感じに収まったと思うし、何より臨時列車づくしだったから単純に楽しかったぞ。
意外にも起伏に富む陸羽東西線、由利高原鉄道でのサプライズ、秋田内陸縦貫鉄道の絶品車窓。
小出し気味で全五記事に及ぶ内容となったが、本稿にて秋田ローカル鉄道旅を終幕する!
(完結)
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