鈍行列車一人旅

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わたらせ渓谷鉄道を辿る

「トロッコ列車から見る渡良瀬川の絶景」

[2013/8/20]

今回は、以前からずっと気になっていたわたらせ渓谷鉄道に乗車する。
群馬の桐生から、山深く渓谷の中を走る風光明媚な路線だ。
元々は国鉄足尾線で足尾銅山の貨物輸送が主だったが、
後に平成になると利用者の減少もあって第三セクターに転換され観光路線となっている。


・わたらせ渓谷鉄道 [相老~間藤]
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北千住から東武特急「りょうもう」に乗って、わたらせ渓谷鉄道の接続駅である相老駅で降りた。
ここからわたらせ渓谷鉄道に乗って、終点の間藤駅へ向かう。


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普通列車は1~2両編成の気動車で運行されている。
車両番号が変わっていて、「わ89-314形」というように先頭に「わ」とついているのが興味深い。
車体は銅(あかがね)色という、阪急電車のようなマルーン一色で塗りたくられている。


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せっかくなので、今回はわ鉄の目玉でもあるトロッコ列車に乗車。
ディーゼル機関車牽引の客車もあるが、今日は走ってないのでもう一方の「トロッコわっしー号」に乗る。
昨年デビューしたばかりの自走式トロッコ気動車だ。
配色が何かラテンっぽいなと思っていたら、車体デザインは地元のラテンミュージシャンが担当したと聞いて納得。


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2両編成になっていて、普通のボックスシートの車両とトロッコの車両が連結されている。


空はどんよりと曇っていて今にも雨が降り出しそうだが、むしろ雨の方が映えそうな景色だし問題ない。
ガラガラガラとエンジン音をふかしながら、僅かな乗客を乗せてトロッコわっしー号は発車した。


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乗客は、意外にも僕と同世代ぐらいの若い女性の方が多い。
途中で団体客も乗ってきて車内は少し賑やかになった。


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大間々駅を出ると、列車は本格的な渓谷の中へと入っていく。


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トロッコ列車に乗るのは初めてだが、やっぱり開放的で気持ちがいい。
健康的だし、ガンガンに冷房をかけるより断然こっちの方が好きだ。


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少し雨が降り出し始めた。
終点までずっと渡良瀬川に沿って進んでいくが、神戸駅までは車窓右側に風光明媚な景色が広がる。


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途中線路のすぐ脇に滝や歴史的建造物があったりして、その都度徐行しながら観光案内がされる。


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沿線有数の観光拠点である神戸駅を過ぎると、列車は全長5.2kmの草木トンネルに入る。
トンネル通過中はイルミネーション点灯が行われるが、トンネル走行中はかなりの轟音になる。
途中で耐え切れなくなったのか、二組のカップルが普通車両の方に退散していった。


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約10分かけて草木トンネルを抜けると列車はすぐ橋梁を渡り、再びトンネルへと入っていく。


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神戸から2つトンネルを抜けて、沢入駅に到着。
ホームにある木造の待合室が素晴らしい。昭和4年建築だから相当な年代物だ。


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沢入駅を出発すると、列車はわ鉄一番のハイライトといわれる絶景区間に突入する。
この区間は人家も一切なく、車窓左側に正に渓谷といった景色が見渡せる。


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沿線には色鮮やかな花が沢山見られる。
桜の時期や紅葉が一番の見所らしいが、混雑するし旅情はなくなってしまうだろう。


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終点近くになると、鉱山住宅の脇を通り抜けていく。


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足尾銅山観光の拠点である通洞駅を過ぎ、列車は終点一つ手前の足尾駅に到着。
大正元年開業からある木造駅舎と未だに全くかさ上げされてないホームが、旧時代の風景そのまんまという感じ。
ここまで昔ながらの雰囲気が残っていると、それだけで何かすごいと思う。


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足尾駅から間藤駅の間は短く、徒歩でも簡単に行ける距離である。
駅構内の側線には、キハ30形・キハ35形が保存されていた。


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やがて相老から1時間20分で、列車は終点の間藤に到着した。
間藤から先も線路は続いており、辿っていくと足尾本山という貨物駅に辿りつく。
この区間は廃止ではなく未だに休止扱い。これはあくまでも撤去予算削減によるものらしく実質的には廃線となっている。

ここ間藤駅は、紀行文作家の宮脇俊三さんが国鉄全線完乗を果たした駅として有名だ。
文学界で鉄道紀行というジャンルを確立し、今では乗り鉄の神様といわれている人である。


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駅ノートには、各人の先生に対する熱いメッセージがびっしりと刻まれていた。
僕も興味があって、これから宮脇先生の諸作品を読んでいこうと思っている。


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間藤駅から、今度は貨物の足尾本山駅までの廃線区間を辿っていく。
線路内には立ち入りできないが、トンネルや信号機などがそのまま残っているので見渡すだけでも何か発見があるだろう。
見所の一つである足尾本山駅構内の精錬所跡は、残念ながら数年前に遺構のほとんどが撤去されてしまったらしく、
今はあまり面白みがないかもしれない。
ただ一度は行ってみたい場所だし、とりあえず見れればそれでよしと割り切る。


まずは駅前の県道を歩き、貨物の廃線跡に沿って足尾本山駅に向かった。


わたらせ渓谷鉄道は車窓が素晴らしいが、それ以上に趣ある駅舎やホームがよかった。
大正~昭和初期に造られた建造物の多くがそのままの姿で残っていて、
沿線にある計38の施設が国の登録有形文化財に指定されているらしい。
個人的には、足尾駅の景観が一番印象に残った。
(完結)
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ムーンライト信州に乗って

「日本アルプス周遊旅行 1日目 (新宿~穂高~燕岳)」

[2013/8/8]

ここ最近は天気も曇りがちであまり遠出する気にはならなかったが、8月7日辺りから天気が回復するということで、
さっそく時刻表と睨み合って鈍行列車の旅を計画。今回は日本アルプスの沿線を辿っていく。
鉄道旅行だけでなく北アルプスの登山も兼ねたもので、合わせて2泊3日の行程とした。



1日目:新宿からムーンライト信州で北アルプスへ向かい、燕岳を登頂し山小屋で一泊。
2日目:山を下り、大糸線→篠ノ井線→中央本線→飯田線と辿りアルプスに沿って南下。
3日目:静岡で大井川鉄道に立ち寄り、東海道本線を乗り継いで帰路へ。


22時辺りに家を出て、まずは新宿へ向かった。



・ムーンライト信州 [新宿~穂高]

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新宿駅の慌しい喧騒の中で、6両編成の183・9系がくたびれた表情で佇んでいる。かつて碓氷峠を越えた旧あさま色だ。
臨時夜行列車「ムーンライト信州」は利用者のほとんどが登山客で、早朝には北アルプスの各拠点へ到着する。
帰りは「あずさ」を利用する人がほとんどなので、需要のない上り列車は滅多に運行されない。



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夜中0時になりかけても、新宿駅構内は利用客でごった返している。23時54分、夜行列車ムーンライト信州は定刻通り発車した。
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僕が今回取った席は一番前の列の通路側の席だ。席の真ん前にドアがあって、ひっきりなしに乗客や車掌が行き交うのでとてもじゃないが眠れない。八王子から先はカーブの多い山間を走っていくので、車両は軋みをあげながらガタガタと揺れる。
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松本に到着し大糸線内に入ると、少しずつ外が明るくなってきた。これから登りにいく北アルプスの姿が窓の向こうに見える。
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やがて4時52分に、燕岳の拠点となる穂高に到着した。思った以上に降りる人が少なく、取り残された気分のまま列車はあっさりと走り去ってしまった。
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穂高駅の駅舎は社殿を模した味わい深いつくりだ。ここ穂高からバスに乗って、燕岳の登山口へ向かう。バスの発車時刻はムーンライト信州に合わせてあるので、効率よく移動することができる。やがて1時間ほどでバスは登山口に着く。準備運動をしっかり行ってから意気揚々と山へ挑んだ。


・燕岳 合戦屋根

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燕岳は北アルプスの入門といわれる山で、登山客は多く初心者でも容易に登ることができる。


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やがて、登山口から約4時間で無事燕岳を登頂。
遥か向こうに、日本アルプスの象徴である槍ヶ岳の穂先が見える。


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初めて見る北アルプスの雄大な姿に、日が暮れるまで見入っていた。


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その後は山小屋に泊まり、翌日早朝に下山し穂高駅へと戻った。

2日目は日本アルプス沿いの路線を南下していく。そして、その所要時間のほとんどは飯田線で占められる。
飯田線は鈍行で全線乗りとおすと、約6~7時間もかかるのだ。
とりあえず、駅前でそばを食べながら大糸線の普通列車を待つことにした。

飯田線乗り通しの旅

「日本アルプス周遊旅行 2日目 (穂高~松本~岡谷~豊橋)」

[2013/8/9]

早朝に山小屋を出て燕岳を下山し、再び穂高駅へ戻ってきた。
今日は、ここ穂高からアルプス沿いの路線を辿って静岡の方へ向かう。



大糸線から篠ノ井線、中央本線と乗り継ぎ、岡谷からあの「偉大なるローカル線」と呼ばれる飯田線に乗車する。
各駅での乗り継ぎ時間は数分のみのところが多く、正直いってかなりギチギチの行程だが怯まず乗り継いでいきたい。



・大糸線 穂高~松本
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穂高駅前で大糸線の松本行き普通列車を待っていると、駅ホームに見慣れないディーゼルカーが停まっていた。



IMG_0057.jpg2010年から地域の観光キャンペーンと合わせて運行が開始された「リゾートビューふるさと」の専用車両だ。このハイブリッド気動車HB-E300系は臨時快速としてはかなり贅沢な仕様になっていて、座席のシートピッチがとても広いことで有名だ。五能線の臨時快速「リゾートしらかみ」も同じ車両で運行されているが、とても快適だったのを覚えている。

IMG_0061.jpgその後数分遅れて、松本行きの普通列車が到着する。運用が激減した115系や211系を期待していたが、主力のE127系100番台がやってきた。701系と見た目はそっくり、内装もほとんど同じだ。見た目で唯一違うところといえるのは、北アルプス側の座席がセミクロスシートになっていることだ。甲高いモーター音をあげながら、終点の松本に向かって突っ走る。

・篠ノ井線[ワイドビューしなの] 松本~塩尻
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今回の行程では、松本~塩尻間が鈍行だと乗り継ぎに時間がかかってしまうので、この区間のみ特急でワープすることにした。振り子式車両の383系である。丸みのあるデザインが個人的には好きだ。座席も快適だがのんびりくつろいでいる暇などなく、およそ10分程で塩尻に到着した。

・中央本線 塩尻~岡谷
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塩尻からは中央本線に乗車。爽やかな長野色の115系だ。113系と比べても、山間部を走る115系は険しい顔つきをしている。長いトンネルをくぐり抜け、約10分で二駅隣の岡谷に到着。ここから、長い長い飯田線の旅が始まる。


・飯田線 岡谷~豊橋
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岡谷駅は飯田線の実質上の起点になっている。
飯田線は全長約200kmもある長大なローカル線で、全線を走り抜ける列車は一日に数本のみである。
元々4つの私鉄を買収して1つの路線としたもので、全94駅もあり駅間距離も短い。
中央アルプスと南アルプスに挟まれた険しい地帯を抜けていくので、
風光明媚な景色や秘境駅も多く見所満載の路線だ。

列車の本数が少ないので、途中下車はしない。このまま6時間ずっと、終点の豊橋まで乗車する。
全線通しで使われる車両は日によって異なるらしいが、今回は313系2両編成での運転だ。
車内は予想以上に混雑している。これから6時間も走り続けるとは思えない雰囲気である。


12時28分、0番線から豊橋行きの普通列車が定刻通り発車した。



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起点の岡谷からしばらくは、のどかな風景が続く。初めから険しい山間へは突入せず、人家の多い街中を抜けていく。
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急な勾配を上ったり下りたりを繰り返す。その上急カーブが連続しているので、スピードは全く出ない。
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一眠りしてしまい、しばらくして目が覚めると車内が空き始めている。少しずつではあるが、ローカル線らしい様相を呈してきた。
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そして乗車してから2時間半ぐらい経ち、列車は天竜橋駅へ到着。沿線の大きな観光拠点の一つで、ここで大半の乗客が降りていった。

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天竜峡から、今度は本格的な山間部へと入っていく。
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天竜川の脇を縫うようにして進む。
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この辺りの駅で乗降する人は全くいない。特に断崖絶壁に建てられた田本駅は、一体誰がこんなところで降りるのか全く見当がつかないほどの秘境ぶりである。
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有数の難読駅である為栗(しでくり)駅に到着。近くにダムがあり、ホーム目の前を流れる天竜川は大河のような趣を見せている。元々はこの下に集落が存在したみたいだが、ダム建設の水位上昇で水没してしまい、今は秘境駅の一つとなっている。
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幾多のトンネルをくぐり抜け、険しい渓谷の中を進む。
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そして、本州で一番の秘境駅といわれる小和田駅に到着。周りに集落などは一切なく、駅から車道へ出るのに一時間近くかかるらしい。降りて観察してみようと思ったが、この後の列車だと豊橋到着が夜9時頃になるし、時間に全く余裕がなくなってしまうので今回は断念。
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地形図を見るとわかるが、この辺りの区間は本当に山の中を突き抜けるようにして線路が続いている。トンネルとトンネルの僅かな合間に深い渓谷の姿が見える。

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日が少し傾いてきた。本長篠辺りを境に乗客が増え始め、ローカル線の雰囲気が薄れ始める。険しい山間を抜けた後は、再び街中を走っていく。
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終点が近づいてくると、さすがに尻がガチガチになってきた。車内はかなり混み合っている。街中でも相変わらずのんびりとしたペースで列車は進む。JRというより大手私鉄の各駅停車に乗っているような気分だ。


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やがて岡谷から5時間56分で、列車は終点の豊橋駅に到着した。


こんなに走行時間が長い普通列車に乗ったのは初めてだ。
全線乗り通しで乗車してみた感想としては、飯田線は各区間によって路線の性格や表情が全く異なってくるということだ。
その表情の移り変わりを味わうのもいいが、6時間ぶっ続けで座席に座っているのは正直しんどいかもしれない。

とにかく列車の本数が少ないので、途中下車を行程に組み込むのは少しシビアになってしまう。
最近「秘境駅号」という観光向けの臨時列車が運行されているらしく、
要所要所を効率よく見回りたい場合は絶対にそちらを利用した方がいいと思った。
終点で降りてしばらくは、乗り通した余韻よりも尻の痛みばかりが先行していたのである。


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日もすっかり沈み、豊橋駅前で晩飯を済ます。その後、東海道本線に乗って少し東へ進んだ。
豊橋から約2時間経って、夜9時に差し掛かるところで掛川に到着。
今日はここ掛川で宿に泊まる。

明日は、鉄道好きの聖地といわれる大井川鉄道に乗車する。
なかなか容易に来られないところだし、一日かけて存分に味わってこようと思う。

大井川鉄道の「SLくん」

「日本アルプス周遊旅行 3日目 (金谷~千頭)」

[2013/8/10]

日本アルプスを巡る旅も、3日目を迎える。北アルプスから鈍行で順々に南へ下ってきた。
今日は東海道本線を辿って帰路に着く予定だ。しかし、帰る前に静岡で絶対に立ち寄りたい路線があった。
大井川鉄道である。

朝8時に宿を出て、東海道線で掛川から二駅隣の金谷へ。金谷は大井川鉄道の起点だ。
金谷から大井川鉄道に乗って、終点の井川へ向かう。


・大井川鉄道
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大井川鉄道は金谷~千頭間は普通の鉄道線だが、千頭から井川までは日本唯一のアプト式鉄道となる。
元々木材輸送やダムの資材運搬用としてつくられた大井川鉄道は、今はその役割を終え観光路線として運営されている。
SLは毎日運行され、主に関西私鉄の名車が普通列車として走っている。


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鉄道好きなら一度は絶対に来たくなるような場所で、鉄道遺産の宝庫と呼ばれている。
しかし自宅から遠いのでまだ一度も訪れたことがなかったし、長年憧れていた場所であった。
今回は全区間のフリーきっぷとSL急行券を使う。



・SLくん [新金谷~千頭]
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SLの起点である新金谷へ着くと、はしゃぐ子供達に囲まれて、何やら鮮烈な青い物体が鎮座している。
その名を「SLくん」。昨年から夏休みに期間限定で運行されているものだ。
青く塗りたくられた機関車C11の姿はかなりインパクトがある。


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客車は全て旧型客車だ。至るところが出来る限り昔の状態のままで残されている。
いかにも観光列車といった華々しさはなく、本当に昭和の雰囲気そのままといった感じ。
これが毎日走っているのだから、もう素晴らしいとしかいいようがない。

しかし、今日は暑い。静岡周辺の予想最高気温は38度となっている。
冷房のない車内は既に尋常じゃないほどに熱い。窓も端から全開状態。
そんなうだるような熱気の中、盛大に汽笛を鳴らしSLくんは走り出した。


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しばらく茶畑の中を走り抜けていく。車掌さんも、実に軽妙な語り口で車内を盛り上げる。
こういった暖かい演出はJRではなかなかみられないものだし、徹底されているのだろうと思う。
鉄道ファンだけでなく、観光客にも根強く支持されている理由が何となくわかった。


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家元までは、車窓右側に大井川の景色が広がる。

「この先に狸がいるんですよ~。大所帯で住んでいらっしゃるので是非左側の窓を見ていてくださいね~」
と車掌さんが言うので、窓を見ていると狸の焼き物が線路脇に沢山並べてあった。
上手い!洒落の落ちどころも完璧だ。しかし、あの狸は何か意味がありそうだ。


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家山駅を過ぎると列車は大井川を渡り、川のすぐ右側に沿って走っていく。
今までは右側の景色がよかったが、ここからは車窓左側に絶景が広がる。


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上り勾配がきつくなったのか、SLくんは豪快に黒煙を巻き上げ始めた。
今回僕が乗っているのは一番後ろの客車で、その後ろには補機の電気機関車が連結されている。
SLのブラスト音と同時に吊り掛け音も聴けてしまうという、自分にとっては贅沢な環境だ。


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人家も少なくなり、昔ながらの山里の景色が広がる。


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終点近くになると、山もかなり深くなる。
あの山脈の向こうに、昨日乗った飯田線が通っているのだ。


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やがて、およそ1時間強で列車は終点の千頭に到着した。到着するとすぐに、SL先頭部分での記念撮影が始まる。
子供達が直にSLに乗って撮影しているのだが、こういう大判振る舞いも他にはできない貴重な体験だろうと思う。


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最後尾でSLくんを支えていた、補機のE10型電気機関車。
昭和24年製造なので、もう既に半世紀以上活躍していることになる。


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ここ千頭から、今度はアプトライン井川線に乗って山奥の秘境地帯へ向かう。
井川線も、あの小さな客車に冷房なんてついてないだろう。今日の異様に猛烈な暑さはどうもおかしい。
夏らしいというより殺人的といえるほどで、駅構内でアイスを買ったらすぐに溶けてベタベタになってしまった。

容赦なくじりじりと照りつける日差しに悶えながら、今度は井川線アプトラインの乗り場へ向かった。

井川線あぷとラインと「アプトくん」

「日本アルプス周遊旅行 3日目 (千頭~井川)」

[2013/8/10]

大井川鉄道井川線は、かつて発電所・ダム建設の資材運搬のために建設された専用鉄道だ。
後に大井川鉄道が買い取り観光用途として運行するようになり「南アルプスあぷとライン」という愛称がつけられている。
ダム湖の水位上昇で線路の一部が水没し、代わりに移設した新線は急勾配のため歯形を噛ませるラック式が採用されている。


・井川線(南アルプスあぷとライン) [千頭~井川]
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もう38度なんてとっくに超えてそうな猛暑の中で、飲み物を十分に買い込んでから僕は井川線のホームに向かった。
車庫も兼ねている千頭駅は色々な車両が停まっているのだが、正午に近づいた今は日向がちょっとした殺人地帯と化しており、
駅構内を進んで見学しようとする人は皆無である。


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線路は普通の鉄道線と同じ幅(狭軌)だが、トンネルの車両限界が小さいため車両の大きさは軽便鉄道並みの小型な車体だ。
客車は色々種類があって、内装や座席もそれぞれ異なっている。
今回乗車する便は、機関車含めて最長編成(10両)での運転となるらしい。


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トロッコのような開放的なつくりの客車もあったが、乗客が集中していたので敢えて一番古そうな客車に乗り込んだ。
車内は正に蒸し風呂状態で、さっき乗っていた旧型客車以上の熱気に包まれている。

終点の井川まで約2時間弱の道のりだ。
独特の警笛を鳴らしながら、実にのんびりとした雰囲気で列車は発車した。


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山の脇を這い蹲るようにして進んでいく。


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終点までずっと、車窓右側に絶景が広がる。


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全線25.5kmのうち、3分の1の部分がトンネルと橋で造られているらしい。
常に車輪を軋ませながらゆっくりと進む。


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千頭出発から約40分で、補機を連結するアプトいちしろ駅に到着。
ここから一駅先の長島ダム駅までの区間が、日本唯一のアプト式区間となる。
ここで「SLくん」に続いて登場するのが、「アプトくん」ことアプト式電気機関車のED90型だ。


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程なくして、アプトくん(ED90形)が後ろに連結される。
これで、列車は機関車を含めて何と12両編成となった。
外から列車の姿を見れば、圧巻に見えただろう。


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井川線の一番のハイライトである、アプト式の区間を力強く登っていく。
しかし、こんな山奥で12両の長大編成列車が走っていること自体に感動する。


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そして、普通の鉄道線で日本最急勾配(90パーミル)といわれる勾配へ突入する。


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後ろからアプトくんが押し上げていく。なかなか頼もしい存在だ。
高低差は尋常じゃない。さっき通った場所がはるか下に見える。


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しばらく進むと、眼下に長島ダムが見えてくる。


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急勾配を上りきり、隣の長沢ダム駅へ到着。ここでアプト式区間は早くも終了となる。
役目を終えたアプトくんは、列車から早々に切り離され反対に引き返していった。


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井川線の一番の見所は、むしろこれからかもしれない。
まさに秘境といえる景色が広がる。


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そして、あの有名な奥大井湖上駅が見えてきた。
長い鉄橋に挟まれ、駅ホームは湖上の岬の先っぽにあるという、ある意味で究極の秘境駅だ。
駅を出るには鉄橋の歩道を渡りきり、険しい山道を延々と歩かなければならない。


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駅に到着すると、一組のカップルがニヤニヤしながら降りていく。
いかにも「してやったり」といった顔つきだ。
ホーム端に何か鐘(?)が設けられているので、多分それ目当てだろうか。


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順調に山間を進んでいく。


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何やら開けた場所に出たと思うと、列車は奇妙な位置で停車する。すごい静かなところだ。
ここ尾盛駅は、秘境駅マニアの間で名高い秘境駅として知られている。
駅周辺は本当に何もなく、駅から道に出る手段もない。
ちなみに左にある旧ホームは「はったり」で、現在は右側にある砂場のような乗降スペースが使われている。


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終点近くで、現存する鉄道橋で日本一の高さを誇る関の沢橋梁を渡る。
橋の上で列車は一時停止。写真だけだとわかりにくいが、
川底から約70mのところに架かっているらしく下を覗き込むと身がすくんでしまう。
(とかいっといて普通に思いっきり乗り出していたけど、、、)


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やがて千頭から1時間48分で、列車は終点の井川に到着した。
駅は南アルプスの麓に位置していて、近くに登山口もある。


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駅前にはお土産屋さんがあるが、他は特に何もない。
駅前から少し道を進むと、井川ダムやダムの展示館があった。

その後は折り返し列車に乗って、隣駅の閑蔵で下車。
閑蔵から路線バスに乗って再び千頭駅へ向かう。バスの所要時間はちょうど30分である。


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バスの中から、さっき通った奥大井湖上駅の姿が見えた。

何もかもが圧倒的だった井川線あぷとラインだが、今回は本当に運がよかったのかもしれない。
機関車が重連で長大編成を押し上げていく様は、昔の鉄道全盛期を想起させるようであった。

モノクロの大井川鉄道の風景

「日本アルプス周遊旅行 3日目 (千頭~金谷~東京)」

[2013/8/10]

今回の旅も、いよいよ終盤が近づいてきた。
このまま大井川鉄道を辿ったら、東海道本線をひたすら乗り継いで帰宅となる。


・大井川鉄道 [千頭~金谷]
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あぷとラインの閑蔵駅からバスに揺られること30分、再び千頭駅に戻ってきた。
復路はSLには乗らず普通列車で金谷へ向かうのだが、今日走る最後のSLが駅に停まっていたのでさっそく撮りにいく。


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C56牽引の「かわね路2号」だ。数年前まで塗装がタイ国鉄仕様だったが、今は普通の国鉄仕様に戻っている。
戦時中に軍事用としてタイへ送り込まれ、多くの仲間が銃撃や爆撃を受けて大破したり兵士の自決とともに散っていく中、
見事生き残って日本に帰ってきた凄い奴だ。


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SLを見送り、約30分後に出る普通列車に乗車する。車両は近鉄の16000系だ。
近鉄は中学の修学旅行のときにしか乗ったことがない(確か30000系だったと思う)。
ゲンコツ顔と、オレンジと紺のツートンカラーに威厳を感じる。


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特急車両なだけに座席はとても快適だ。
ゴトゴト揺れながら、のんびりと走っていく。


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こじんまりとした風情漂う抜里駅。駅周りは茶畑が広がり、日本の原風景そのものといった感じだ。
モノクロにすると、いつの時代かわからなくなってしまう。


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一度だけ途中下車できる時間があるので、映画のロケ地としてよく使われる家山駅で下車。
駅舎は素晴らしいの一言に尽きる。少し前までは駅舎前にコインロッカーや自動販売機が置いてあったが、
景観が損なわれるとのことで撤去されたらしい。


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駅構内も独特の雰囲気だ。


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手書きの運賃表には、あちこち塗り替えられた跡がある。
かつて国鉄の列車が直通していた名残で、東海道線の運賃も載っている。


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家山駅は桜の名所でもあり、駅のすぐ横は桜並木になっている。
3月下旬になると花見客でごった返すそうだが、今は自分一人を除いて誰もいない。
駅を一通り観察した後、ホームで次に来る列車を待った。


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しばらくして、普段は運行されない臨時急行列車がやってきた。南海電鉄の21000系である。
臨時急行は京阪の旧3000系が充当されていることが多いが、今日は南海ズームカーでの運行らしい。


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流線型の車体が素晴らしいが、内装もすごい。座席は転換クロスシートだ。
網棚下の照明や優雅な肘掛のデザインなど、今見てもとても斬新だと思う。


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新金谷駅では、仕事を終えた機関車達が体を休めていた。


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やがて、夕方17時過ぎに列車は終点の金谷に到着した。
夕日を浴びる南海電車に別れを告げ、大井川鉄道の旅はこれにて終了となる。
記録的な猛暑に苦しんだが、そんなの気にならないくらいに素晴らしいところだった。
いつかまた数年後に、乗りに来ようと思う。



・東海道本線 [金谷~東京]
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金谷からは、東海道本線に乗って東京へ向かう。
近くで起きた人身事故の影響で、ダイヤは大幅に乱れ混乱状態となっていた。
とりあえず、すぐにやってきた熱海行きの列車に乗って東へ進む。

その後乗り継いだ列車も、遅れを取り戻そうと思いっきり突っ走る。
しかし東京近くになると、列車がドン詰まりになって品川で立ち往生してしまう。
品川からは京浜東北線に乗り換えて上野まで行き、いつも通り常磐線に乗って夜23時に帰宅した。


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今回の旅は燕岳登山と飯田線と大井川鉄道をメインとしたが、旅先では常にアルプスの山々が見えた。
例によってギチギチな行程ではあったものの、計画通りに上手く乗り継ぐことができたからよかった。
何だかんだいって天候にも恵まれていたし、これまでものと比べても総じて安定感ある旅であった。
(完結)


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