鈍行列車一人旅

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夏の海芝浦支線を行く

「鶴見線スナップ散策 1/4 (鶴見~海芝浦~新芝浦~浅野)」

[2016/7/2]

鶴見線。鉄道大国日本でも、大都会真っ只中に存在し続ける超ローカル鉄道だ。
横浜市鶴見から京浜工業地帯の奥へ延び、3つの末端を持つ珍路線だが、
その正体は工場で働く従業員の通勤路線。
平日は工場の通勤客でごった返し、休日はガラガラの様相を呈する。

そんなわけで、鶴見線は土日に訪れるのが○。必然的に人が少ないからだ。
30度越えの7月初頭、私は鶴見線のもとへ向かった。


・鶴見線 [鶴見~海芝浦]
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JR鶴見駅構内に鶴見線の専用改札があって、SUICAをかざして通ればそこは既に"異界"だ。
始発駅の時点で、他とは違う雰囲気を醸し出す。それが鶴見線の面白いところ。
鶴見線に来るのはコレで3度目。今日は新愛機GRで全線スナップに挑む。

休日の鶴見線は本数が少なく不便だが、朝方か夕方なら効率良く乗り継ぐパターンが組める。
16時20分に鶴見を出発し、電車と徒歩を駆使して全線を攻略するプラン。駅名だけ記すと、
「鶴見→海芝浦→新芝浦→浅野→武蔵白石→大川→安善→昭和→扇町→国道→鶴見」
って感じで……乗り鉄以外は激しく同意してくれない散策スナップをやるんで、そこんとこよろしこ!


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鶴見線の電車は3両編成だ。ローカル風味満載だが車掌は健在である。
16時20分発の海芝浦行きは、ガラガラの状態で鶴見を出た。


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タモリ倶楽部とかで特集されてすっかり有名になった鶴見線だが、
観光客でごった返すとか、そんなことはまずない。
あくまでテツ向けのディープ路線なのだ。

そんなディープな鶴見線だけど、フツーの人にも知られている超有名スポットがある。
今日はまずそこへ向かおう。




鶴見からしばらくは住宅街なので地元客が多いが、弁天橋を境に一気に乗客が減った。
工業地帯へ突入し浅野を過ぎると、海芝浦行きは運河沿いの支線へ入る。
左手には運河が流れ、無機質な工場やら業務用の船やらが見え始める。

大都会の喧騒も、お洒落さのかけらもない、ちょっとした異界へ入り込んでいく。


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運河を眺めながら進んでいくと右にグッとカーブし、
列車は海沿いに出た。

終点海芝浦は、鶴見から僅か11分で到着となる。


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眼 の 前 が 海 。

海芝浦の魅力。それは、駅ホームの真ん前に海が広がっていることだ。
眼の前が海ってだけでも衝撃だが、この駅は他も珍要素があることで知られる。
まず、駅から出られない。駅出口がそのまま東芝の工場敷地内となっているため、
一般人が改札を出ると不法侵入で捕まることになる。「駅を出る=犯罪」が成立する超絶レベルの珍駅。

じゃあフツーの人は来てどうすんのさ??て話なんだけど、東芝もそこは考えたのか、
改札とは別に、駅構内と直結して小さい公園が設けられている。




「海芝公園」と名づけられた公園が、駅構内からそのまま続いているのだ。
一応駅構内に自販が一台置いてあるので、そこでジュースを買って、
公園のベンチでマターリすることも可能。

公園では少数の家族連れがくつろいでいた。
ディープというよりは、メジャーなスポットになりつつあるのかもしれない。


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それにしても潮臭いところだ。
都会真っ只中にして潮風を感じられる駅である。
駅舎の屋根も、関東の駅100選のプレートも、良い感じに錆び付いていた。

潮の匂いっつーよりは、生臭くてリアルな磯の臭いだけど。
本当に綺麗な海は潮の匂いがしないらしい。仮にも工業地帯ですからねココは……


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自販で買ったコーラをガボガボ飲みながら、ホームの端でボーっと海を眺める。
簡単に来れて人が絶対的に少ないので、ある意味究極の贅沢である。

眼の前は海。空が広い。コーラがうめぇ!




潮風を、潮の匂いを感じながら、海芝浦で夏を感じていた。
ポエミーな気分に浸ること20分。折り返し列車の時間が来る。
海芝浦に来る列車は本数が少ないので、すぐに折り返したほうが無難。

お次の下車駅は新芝浦だ。16時53分発の鶴見行きで、隣駅の新芝浦へ向かおう。



・鶴見線 [海芝浦~新芝浦]


海芝浦から新芝浦までは約800m。普通に歩いて行ける距離だが、
この区間に限っては電車で移動するしか方法が無い。
新芝浦へ行けば、一般人が通れる道(徒歩限定)が延びているので、
線路際をちょっと散策してみようか。


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僅か2分で新芝浦へ到着。
海芝浦は海沿いだが、この駅は運河に沿ったところに存在している。




眼の前が運河という……ニッチなロケーションだが、コレはこれで面白い景観だ。
駅の真横が運河で、向かい側は工場しかない。鶴見線は全てが日常離れしている。
異空間を覗くというより、自分が異空間の中にいるって感じだ。

人が少ないので、なおさらその感覚が強い。




こういう景色とかタマラナイ。ローカル線以外の何者でもないっていう。
実際、新芝浦から先で単線になってるので、よりローカルな雰囲気を醸し出す。


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鶴見線は鶴見を除き全て無人駅。吹き抜けのガランとした構内に、
下車用の切符入れとICタッチ機がポツンと置かれてるだけである。

SUICAをタッチして駅を出ると、そこは東芝工場入口の真ん前であった。




新芝浦の駅舎は相当古く、年季の入った木造建て。恐らく開業当時からのものだと思われる。
コレみよがしに迫り出している東芝正門屋根とのギャップが凄い。
完全に東芝訪問者専用の駅って空気になってるw

駅前は警備が手厳しく居心地良くないので、さっさと浅野目指してひた歩く。



・徒歩 [新芝浦~浅野]
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工場の従業員に混じって、線路脇の広大な道路を進んでいく。
新芝浦~浅野間は距離にして750mほどで、徒歩でも10分ほどで着いてしまう。
どうやら、この道に名物的なブツは無い模様。強いて言うならバス停と鶴見線の線路ぐらい。

後に知ったのだが……この道路、公道ではないらしく(つまり東芝の私道)、一般車は入れないそうな。
妙に道が整然としてて面白くないなって思ったら、そういうことだったのね。
いずれにしても、徒歩なら問題ナッシングっす。


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何処もかしこも、線路は草ぼうぼうである。

線路以外で何か探そうとしたが、
特にネタになりそうな被写体は見つからなかった。
鶴見線は、西よりも東がディープなのかもしれない。ワクテカワクテカ。




線路脇にある巨大クレーンが、ちょっとカッコいい。
何をするためのものなのか知らんけど、ちょっとカッコいい。

クレーンを舐めるように撮った後、踏切を渡って浅野駅へ到達する。


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コレで現役の旅客鉄道ですからね……。しかもJRだし。
地方ローカルの民鉄でも、なかなかこういう風景って無いと思う。

雑草まみれになる夏に来てよかった。鶴見線といえば雑草ってイメージがあるので。


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海芝浦支線の散策はこれにて終了。
「あっちぃ~!」茹だる暑さに身を任せ、生温くなったコーラを一気に飲み干した。

ホームに上がるとすぐに列車がやってきた。もちろん全て計算済みである。
事前に列車の時刻を下調べしとかないと、休日の鶴見線は効率良く散策が出来ない。
それは、鶴見線が生粋のローカル線だから。ローカル線の旅は計画性がないと痛い目に合うのだ。

お隣の「大川支線」を攻略すべく、私は武蔵白石行きに乗り込んだ。(次回へ続く→)

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草茫々の大川支線

「鶴見線スナップ散策 2/4 (浅野~武蔵白石~大川~安善)」

[2016/7/2]

7月初頭の夕刻。それなりに計画を固め、カメラ片手にフラッと行き着いた鶴見線。
まずは海芝浦支線を攻略し、新芝浦から道路をひた歩いて浅野へ。
次の目的地は大川だ。

大川支線に行くのは初めてだ。休日は殺人レベルの本数に変貌する、魔境の路線である。
コーラを飲み干すと、雑草まみれの線路の向こうから電車がやってきた。


・鶴見線 [浅野~武蔵白石]
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広い構内を持つ浅野駅。線路が5本もあるが、いずれも草ぼうぼうである。
17時22分発の武蔵白石行きが、定刻通り到着する。
何故かは知らんが休日に3本しかない珍列車。

海芝浦支線の場合、休日だと2時間に1本の時間帯もあって結構なローカル度だが、
コレを軽く超越しているのが、今から向かう大川支線なのだ。


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武蔵白石止まりなので車内は空気状態。全体的に哀愁が凄い。
安善辺りは市井の匂いがする。無機質な中にも生活の匂いがする。
ノスタルジックな住宅街と色褪せた工場の間を、ゴトゴト走り行く。


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陽だまりの空、漁港、そして工場。
武蔵白石まで3分の道のりだが、独特の車窓が流れる。
何処もかしこも非日常で"濃い"。それが鶴見線クオリティ。

俺、やっぱり鶴見線好きだわー。都会の中で一番好きかもしれない。


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終点武蔵白石に到着。時刻は17時半を過ぎようとしている。
列車を降りると、仕事帰りの人(主にオッサン)がなだれ込んできた。
こんな土地で観光面してるとろくなことにならないので、地元民の如くズカズカと歩く。


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古きものと新しきものが混在する駅構内。有人改札の名残が残っている。
しばらく撮影してると、1番線から、さっきの列車が発っていった。

武蔵白石から、まずは徒歩で大川支線沿いの道を歩こうと思う。15分ほどで行けるので楽勝だ。
歩いて大川駅へ到達したら、すぐにやってくる大川支線の最終列車に乗って戻る。
絵に描いたような合理的プランだが……行ってみましょうか。



・徒歩 [武蔵白石~大川]


鶴見線は如何にも「駅でござい!」みたいな駅舎ばかりだけど、
ここの駅舎はちょっとお洒落だ。モダンで牧歌的な屋根がいい感じ。北海道にありそう。

駅前は割と交通量が多い。鶴見線好きなテツは多く、一眼ぶら下げたテツを見かける。
私の手元にあるのは時代錯誤のコンデジGR。それだけだ。
鉄道趣味の王道を捨て、スナップにハマル犬なのさ。


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武蔵白石を出て右に進むと踏切があるので、そこを渡って真っ直ぐ進んでいく。
線路上に聳える錆び付いた鉄塔群がメッチャいい感じ。
思わずガバッと撮ってしまった。

鶴見線は電車がチッポケなのに鉄塔が高く聳えている。それがまた、いい!




本線の踏切付近は人通りが多いが、大川支線沿いの道に入ると人気が少なくなってくる。
工場脇を得体の知れない線路が延びている光景は臨海工場地帯ならではで、
数ヶ月前に訪れた工場夜景のときもそうだった。

言葉に表すのは難しいが、何処かミステリアスな雰囲気なのだ。


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しばらく道を進むと、運河を渡る橋に行き着いた。
もちろん、並行する鶴見線も橋で渡っているのだが、
大川支線の名物となっているのが、ここの運河の鉄橋だ。




「第5号橋梁」と名乗るこの鉄橋は、全長1kmしかない大川支線唯一の橋である。
線路が草ぼうぼうで錆びだらけなら、橋も色褪せていて錆びだらけ。
橋は何故か「青・赤・黄」と三色に塗られている。

ちなみに第5号橋梁には、戦時中米軍機に銃で撃たれた痕跡が残ってるらしく、
橋の袂をよく見ると、無残にもボコボコ穴が空いていた。


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第二次世界大戦中、飛来してきた米軍飛行機が、鉄橋を蜂の巣にしていったのだ。
戦争の時代、陸上輸送の王だった鉄道を狙う空襲が各地で起きたというが、
それは鶴見線も例外ではなかったらしい。

こういう"影の歴史"をそのまま残す鶴見線って、やっぱり面白い。




橋の反対方を見ると、運河とプラント混じりの工場景色が広がっていた。
夜に来ればちょっとした夜景が味わえるかもしれない。
ただ、夜景としてはちょっと弱いかなココは。

運河の奥には扇町が控えている。今日、私が目指す最終目的地はあそこだ。


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運河を渡りさらに真っ直ぐ進むと、間もなく大川駅に到着した。
大川支線の終点であり、駅から先のところで線路が途切れている。
超ローカル線とはいえ徒歩でのアクセスは容易。往復でも余裕だろう。

列車が来るのは10分後だ。あまり時間無いのでスパッと散策していこう。




大川支線の終点、大川駅。この駅、そもそもどういう駅なのか??というと、
平日1日9本休日1日3本しか列車が来ない超ローカル駅なのだ。恐らく都会随一。
海芝浦支線と同じく工場の従業員がメインの乗客であり、平日・休日とも日中は一切列車が来ない。
なので、休日電車で訪れるには相当困難である。というか激しく困難である。

駅舎が並外れてボロい。その噂は聞いていたが、実際見てみると風格が他と違う。
「地方でもここまでボロボロなのは今どき無いんじゃ??」って感じの、
色褪せ煤けきった木造建て。駅というよりは小屋みたいだ。


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駅舎の横には線路を渡る小さな通路があって、そこから駅構内を存分に観察できる。
超ローカル線の末端なだけに、線路は草ぼうぼう。現行の線路の横には、
昔使われていたと思われる貨物の線路がある。

しかしいずれも雑草で埋まってしまっていて、全ては自然に還りつつあるようだ。




向かい側へ渡ると、駅構内の線路とは別に独立した線路が一本、
生い茂る雑草の中から顔を出していた。これも貨物で使われていた名残だろうか。
色々散策しているうちに、あっという間に列車の時間が来る。
今日大川を発つ最後の列車……18時01分発の鶴見行きが姿を現した。


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草 茫 々 の 線 路 と 18 時 台 の 終 電 。

大川支線が大都会ローカル線の究極だと思えてならない。
18時台で終電が成立する路線なんて、東京近郊でもここだけだと思うw

列車の到着は17時58分。3分後に発車するので、すぐにホームへ向かい乗り込んだ。


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18時01分、大川発の最終列車が定刻通り出発する。
列車は鶴見まで行くが、私の散策旅はまだ終わらない。

鶴見線の本線の末端、扇町が残ってる。扇町で完全制覇といこう!



・鶴見線 [大川~安善]
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大川支線を出ると、列車は武蔵白石をかすめて、隣駅の安善へ。
武蔵白石はかすめるだけで停まらない。大川支線用のホームが無いからだ。
俗に「ゲタ電」と呼ばれる、茶色の旧型電車が走ってた頃はあったらしいのだが、今は無いらしい。

本線と合流してすぐに見える運河の風景が、日本離れしていて興奮した。
船着場のオンボロさ加減とかタマラナイ。




安善到着は18時05分。列車を降りると、ホーム脇に広大な貨物線路が広がっている。
元々貨物がメインだった路線なので、今も旅客がオマケのような佇まいだ。
特にこの駅は貨物線の規模が大きく、完全に貨物優勢って感じ。
細く簡素なホームが、それをより助長している。


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西より東の方がディープだという実感は、あながち嘘じゃなかったかもしれないぞ。
鶴見線本線の末端、扇町エリアには何が待っているのか??
ぶっちゃけ、最低限の下調べはしている。何があるか既に知っている。
しかし、実際に訪れることで得られるものだってあるのだ。あるはずなのだ。

ワクテカ気分を高めながら、私は3分後に来る扇町行きを待った。(次回へ続く→)

扇町と昭和と野良猫

「鶴見線スナップ散策 3/4 (安善~昭和~扇町)」

[2016/7/2]

魔境ローカル線「大川支線」を攻略した私は、大川発の最終列車で安善へ戻ってきた。
海芝浦支線・大川支線を行ったなら、残るは鶴見線本線の末端だけだ。

鶴見線の中で最もディープなのは、やっぱり東の扇町エリアだと思う。
それは、以前来たときに何となく感じていたことだった。
色褪せた街並み、工場、錆び付いた鉄塔。
海芝浦近辺と比べても、扇町はノスタルジックで刹那的な構造物が多かった気がする。


・鶴見線 [安善~昭和]
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安善到着から数分後、18時09分発の扇町行きがやってきた。
休日の鶴見線は支線の本数が殺人的に少ないが、それは本線も同じ。
一見本数が多そうな本線も、浜川崎止まりの列車が半分を占めていて、
終点の扇町まで行く列車は限られている。海芝浦と似たり寄ったりの本数なので下調べ必須!

終点まで乗って直行で帰るのはつまらないので、往路は徒歩で散策スナップでもやるか。
扇町の手前に「昭和」という、如何にもな名前の駅があるので、
そこで降り、道路を歩いて扇町へ向かう。


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どんどんディープになってきた。

安善辺りで感じた市井の匂いは消え失せ、武蔵白石を出たところで工場一色になった。
南部支線と接続する浜川崎を出ると、広大な貨物線の脇を抜け、
運河を渡って埋立地の扇町へ入っていく。


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人混みの中で同じような景色を見るのがクソつまんないと感じた人は、鶴見線に乗るといい。
未開の非日常とリアルを求める方にこそ、鶴見線の魅力は開かれている。
偉そうに何言ってんだ、俺。

でも、ホントに思うんだ。そういう人にとって、鶴見線は天国なんだって。




18時16分、列車は昭和へ到着した。名前が名前なので一度降りてみたかった駅だ。
ホームに佇んでいたのは、僅かながらの利用客と、ニャーだった。
ニャーがオッサンに混じって鎮座していた。

ズカズカ近づいても微動だにしない。やっぱり、駅に住むぬこは格が違うのか。
列車が去ると、ホームの向こうからもう一匹近づいてきた。


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鶴見線の駅に猫が住み着いているのは有名で、猫目当てで来る人もいるという。
まるで実家の如く、のんびりと毛づくろいをするぬこ達。
実際、ここ一帯に住み着いてるのだろう。

気持ちよさそう。こんな土地でも、野良猫はどっこい生きてるのだ。




毛づくろいを終えたぬこは、線路に降り立って"STAND BY ME ごっこ"を繰り広げ始めた。
過酷な環境で生きている野良猫にとって、鉄道なんぞ遊び道具に過ぎないのさ。

非日常を求めるくせして安全に旅をやってる、自身の呑気を恥じた。


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まず第一に俺は思う。観光なんてする場所あったのか、と。
いや、ただ単にポスターを貼るスペースなんだろう。きっと。

何も貼られてませんけどw




食ったような名前の昭和駅だが、駅名の由来は隣接する昭和電工だ。そのまんますぎて秀逸過ぎる。
駅前が昭和電工の入口になっている。そして、駅舎が大川と肩を並べるくらいボロく、古い。
昔ながらの木造建てであり、頽廃よろしく蔦が絡み付いてるのが何ともいえない。

駅前の道沿いに僅かな商店があるが、尋常じゃないほど寂れている。ここ本当に東京近郊か??
アレだな。もうコレ昭和電工じゃなくて、完全に"昭和"の世界だから。
駅名とリアル、両方セットで体現しちゃってますから!


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扇町へ真っ直ぐ行ってもいいが、さっき見た運河の風景が良かったので、ちょっと寄り道。
駅前を出て道を左に進んだところに、扇橋という橋があるので行ってみる。
昭和付近唯一のスポットといえるかもしれない。

道中貨物の線路が横切っているが、現在使われている形跡は全く無い模様。
貨物線を渡れば、扇橋はすぐそこだ。




運河っていいなぁ・・・!

ディープ&コアな工場地帯の景観は、少し前まで観光としてはタブーというか、
そもそも見向きもされなかったはずだ。でも、今は違う。

無機質で得体の知れない、それでいて何処か生活臭のする工場に何かを感じる人が増えてきたんだと思う。


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夕陽に急かされながら、私は扇橋を後にした。
元来た道を戻り、昭和駅前を過ぎ、そのまま真っ直ぐ進む。
すると、右斜めに続く道がある。扇町駅へ向かうための唯一の道へ入る。



・徒歩 [昭和~扇町]
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扇町エリアもやっぱり工場しかない。道は手厚い柵に囲まれているので眺望は良くないが、
柵の向こうに剥き出しのプラントやタンクがチラッと見えたりする。
ただ、そこまでダイレクトには迫ってこない……かな??

工場萌えのメッカである浮島町や千鳥町と比べると、微妙かもしれないが、
さっきの扇橋然り、ピンポイントで異界的景色を覗けるのが楽しい。




焼ける夕陽をバックに、一人でGRを弄りながらパシャパシャ撮りまくった。
持ち主のポテンシャルが反映されるカメラなので、八割方が微妙な写真になるのだが(苦笑)、
試行錯誤するうちに「コレだ!」と思う写真が撮れるときが、たまにある。その瞬間がたまらない。

ローアングルで屈んで撮るのがマイブーム。扇町にて変態がまた一人、生まれた。


GR000492.jpg

スナップしながら進んでいくと、呆気なく扇町駅前に到達する。
すぐ電車に乗って帰ってもいいが、
私が気になっていたのが、扇町駅のさらに奥。
駅前から、一般人も入れる車道が先へと続いているのである。

川崎の工場地帯でも相当ディープな一角が、この先で待ち構えているという。
ということで扇町駅はスルーして、ちょっと行ってみましょうか。




貨物線の踏切を渡り奥へ進んでいくと、右手に錆び付いたガスタンクが現れた。

この辺りまで来ると人気は皆無で、工場の通勤客がポツポツと歩いてるのみである。
ガスタンクの横を抜けるとT字路になってるので、そこを右に曲がる。
すると……


GR000508.jpg

D E E P W O R L D へ よ う こ そ 。

ここは何なのか??というと、道の両端に昭和電工の工場が迫り来る一角なのだ。
凄い重圧感。辺りは工場の臭いと、息苦しい重低音で満ちている。
グオオオオ!っていう工場の唸りが間近に迫る感じがたまらない!




立入禁止の脇道を覗くと、配管パイプが縦横無尽に絡み付いているのが見えた。

こんな場所で立ち尽くしていると、自分が無力でちっぽけな野良犬に思えてくるし、
工場が巨大な生命体のような感じだ。360度工場で、そのド真ん中に立っている。
浮島町や千鳥町でも、ここまで間近に"工場"を感じられる場所は無かったと思う。


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車道はさらに奥へと続いているが、DEEPな雰囲気を味わえるのは昭和電工の一角だけっぽい。
意外だったのは、こんな奥地でも鶴見線の貨物線路が延びていたこと。
しかし現在、使われている形跡は全くないようだ。

あまりブラブラするのもアレな場所なので、キリのいいところで扇町駅へ引き返した。
時刻は18時55分。19時ちょうど発の鶴見行きで帰路に着こう。


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扇町駅は旅客ホームの他、旅客を遥かに上回る貨物スペースを持っている。
おっここにもぬこが。線路脇を歩いて駅へ入っていく。

もしかして……




ぬ こ 天 国 だ っ た 。

駅なのに人いなくて、猫しかいないってどういうことだしw
無性に戯れたくなってきたが、列車が出るまで数分しかないのでスルー。
鶴見線は完全攻略したが、実は、あと一つ忘れてはならない駅がある。
帰路ついでにその駅へ立ち寄って、今日の散策スナップを締めたいと思う。

鶴見線といえば、個人的にあの駅以外ありえない!(ネタバレ必至→)

異界の駅、国道へ

「鶴見線スナップ散策 4/4 (扇町~国道~鶴見)」

[2016/7/2]

国道。鶴見線の中で最もディープであり、現実離れした異界の駅である。
数年前初めて訪れたとき、私は国道駅の存在に衝撃を受けた。
闇市を思わせる空間、歴史を感じさせるアーチ天井、生々しく残る銃痕。
行かれた方にはわかってもらえると思うのだが、あそこはマジでヤバイ駅だと思う。

ということで、個人的には完全崇拝レベルのあの駅へ、もう一度行ってみることにした。
扇町から鶴見行きに乗って、鶴見手前の国道へ向かう。


・鶴見線 [扇町~国道]
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夏は陽が長く乗り鉄には有難い季節だ。時刻は19時前だが、陽は何とかギリギリ持った!
冬だと今日の鶴見線散策は成立してなかっただろう。出発の時点でお先真っ暗だったに違いない。
19時ちょうど発の鶴見行きに乗り込む。ガラガラの車内に車掌の声が響き渡り、列車は動き出した。

陽はすっかり没し、運河越しに昭和電工のプラントが光り始めた。
扇町は、東の浮島町~千鳥町~水江町に次ぐ川崎工場夜景の一角である。




鶴見線の電車は国鉄生まれの年代物だ。そして、俺は国鉄電車のフカフカ座席が好きだ。
JRのS字座席は「シャンと座りなさい!」って強要されてるようで、しっくりこない。
鬼畜の仕事帰りでも国鉄の座席にありつけば天国!
姿勢を強いられないし、懐深い座り心地に愛着が持てるのさ。


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ディープな工業地帯を抜け、武蔵白石から列車は市境を越えて横浜市へ入る。
一応"横浜"なのに、横浜のお洒落でカッコいいイメージとは程遠い風景だ。
千葉県民的な視点だと、都心のシャレオツな街並みを想像してしまうし、
横浜=コレじゃない感が300%全開なのは間違いない。

浅野を過ぎ乗客が増えてきたところで、列車は国道へ到着した。


GR000558.jpg

再びやってきたぞ、国道!この駅の何が良いって、まずシンプルな駅名だと思う。
国道の横に駅を建てたから「国道」だなんて、どんだけ潔いんだって話。
ストレートだし、シンボリックなカッコよさがある。

列車が去ると、ホームは私を除いて誰もいなくなった。




国道の乗り場は、起点の鶴見と似通った構造だ。カーブを描く線路上にホームがある。
剥き出しの鉄骨屋根に昭和を感じるし、年季が入っていて見ごたえがある。
高架上でも雑草は生え放題だ。雑草最強説キタコレ。

俺は鶴見線に乗って知った。野良猫と雑草の逞しさを。


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他の在来線と違う、黄色い駅名板に鶴見線の特異性を感じる。
ていうか、なんでこんなに凝ってるんだろ??
普段見かける国鉄の青いやつとも、JRの白いやつとも違う。
帰宅後グーグル先輩に聞いても理由はわからなかった。謎が謎を呼ぶ展開。


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ホームを撮った後、お待ちかねの高架下へ。国道駅は三層構造になっていて、
上層の上り・下りホームは、高架下中層の連絡橋で繋がっている。
中層の時点で吹き抜けになってるので、独特の駅構造を眼で見て味わえる。

初めてきたとき、連絡橋から見下ろしたときの衝撃は忘れられない。




国道駅の凄いところ。それは、1930年の開業時から一度も改築していないことだ。
1930年。つまり、昭和初期(昭5)の様相をそのまま残して今に至っているのである。
鶴見線は大半の駅が昔のままだが、国道駅のホームは高架上に存在しており、
広大な高架下も含めて昔のままで残ってることに価値がある。

何時見ても強烈な空間だ。海芝浦も衝撃だったが、横浜にこんなヤバイ駅があったのかって、
ときのとまった空間に吸い込まれそうになったのを覚えてる。


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「やっぱココすげぇわ…!」独特の空間に圧倒されながら、階段を下りていく。
階段を下りると改札があるが、無人駅なのでSUICAタッチ機が置いてあるだけだ。
以前来たときは木造の有人改札跡が残っていたが、今は撤去されてしまったらしい。残念!




国道高架下を魅力たらしめているのが、造形美を感じるアーチ天井。
これは、昭和初期に流行ったアールデコ様式というやつだ。
開業当時、駅構内はちょっとしたデパートだった記録が残っている。その名も「臨港デパート」。
デパートとして発展させる構想があったから、お洒落なアーチ天井にしたんだろか??

信じられないのだが、今で言う"駅ビル"の走りみたいな繁栄が、昔この駅にあったというのだ。


Kokudo Station old
「開業時の国道駅 (Wikipediaから引用)」

開業当時の写真を見ると、多少の変化はあるが、建物の意匠は全く変わってないことがわかる。
今は片側のみだが、昔はホーム両側に階段・改札があったらしい。
クロサワ映画(野良犬)で闇市を再現するために使われたエピソードもあり、
今もどっかのドラマのロケで起用されてるのは有名な話。

アーチ天井だけじゃなくて、柱根元の煉瓦とか未だに残ってるんだから凄い。




一つ残念なのは、老朽化してヤバくなってきた物件が板張りで塞がれていることだ。
確実に老朽化が進んでいて、今後板張りがさらに増えると思われる。
訪れるなら今のうちかもしれない。

板張りに囲まれて未だ存在しているのが、一軒の焼き鳥屋。
「国道下」と名乗っている。ド直球(笑)。そういうセンスって素敵。




昔、国道高架下は商店や住宅で賑わっていたらしいが、今は見る影も無くひっそりとしている。
人の繁栄が消え、物件だけがそのままの姿で取り残されているわけで、
誰かが住んでいた形跡が至る所に残っている。

赤いポストに剥き出しの配線類、換気扇、煤けた引き戸。
現実離れしてるのに、日常と隣り合わせのモノが共存してるのがタマラナイ。
一ヶ所だけある隙間の通路(?)とか、謎すぎる。実はここから駅を出ることも可能。


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地元民にとってここは単なる抜け道に過ぎないようで、意外と人通りは多い。
以前来たときは昼下がりだったが、構内の明るさは昼も夜も全く変わらない。
薄暗い外套の下から闇市の商人が出てくるのではないか。
そんな妄想をしたくなる光景。




外に出ると、目の前は国道。東京~横浜を結ぶ国道15号が通っている。
鶴見線と唯一交差する国道であり、旧国道1号という輝かしい肩書きを持っている。
神奈川の人が国道15号を「一国」と呼ぶのは、それが主な由来。イチコクってカッコいい響きだな……!

駅入口の右手には、大川支線でも残ってた米軍飛行機の銃痕が。
中層のアーチ窓は完全に塞がれていた。アーチ窓も国道の個性だったのになぁ。




3年前の探索画像とドッキングしてみると、昼も夜も大して変わらない印象だ。
陽が出ようが沈もうが、同じ明るさで不変の存在感を放っている。
80年前の世界が高架下に閉じ込められて、住宅街の中に存在し続けているという事実。
吸い込まれそうな引力がありますね。ブラックホール IN 国道!



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鶴見線の世界にずっと浸っていたい。

俺が鶴見線好きでしょうがないのは、ディープなのにインパクトがあってわかりやすいからだ。
中途半端な残念感は一切無いし、「眼の前が海だ!」とか「1日3本しか来ない!」とか、
初見でも「ここマジで面白い!」ってなる魅力に満ち満ちてるんだと思う。

19時半を過ぎたところでホームへ戻り、鶴見へ帰還。コンパクトな鶴見線散策を終えた。
探索時間はたったの3時間。なかなか濃い濃すぎる3時間だった。


GR000642.jpg

全線攻略した感想としては……やっぱり、鶴見線は何処へ行ってもハズレが無かった!
大人のアトラクションみたいで楽しいし、飽きない。特に人少ない休日は最高。
乗り鉄辞めても、小湊鉄道と鶴見線だけは再来しようと思ってる。
今日の散策で、「東の小湊鉄道/西の鶴見線」という横綱構図(?)が成立しました。

今回行った鶴見線散策は割と実用的だと思ったので、以下に詳細な時刻とルートを記してみました。参考になれば。
6~7月の休日限定プランです。4~5月や8~9月だと途中で陽が暮れますが、
扇町で工場夜景を楽しめるのでそれはそれで面白いかも。

鶴見発16:20→海芝浦着16:31→海芝浦発16:53→新芝浦着16:55→徒歩&散策(約20分)→浅野着
浅野発17:22→武蔵白石着17:25→徒歩&散策(約30分)→大川着
大川発18:01→安善着18:05→安善発18:09→昭和着18:15→徒歩&散策(約40分)→扇町着
扇町発19:00→国道着19:15→国道探索→帰路へ


天下の東海道・横須賀線は通過してしまう駅、鶴見。
よそ者は京浜東北でしか来れないこの駅に、人知れず異界へと誘うローカル線があった。

(終わり)


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