鈍行列車一人旅

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只見線を日帰りで行く (前編)

「只見線日帰り強行旅 1/2 (大宮~高崎~水上~小出~只見)」

[2016/4/22]

只見線。言わずと知れた、東日本ローカル線の王者である。
乗り鉄問わず旅好きなら一度は乗ってみたい路線だが、東京からだとちょっと遠いのがネックだ。
列車の本数も限りなく少ないため、旅程を立てるのが難しい。行くんだとしてもせめて一泊二日だろうか……。

「寧ろ日帰りでも行けるのでは??」一度そう考えてしまうと、また馬鹿やりたくなってきた。
そもそも日帰りで行くっていう発想がオカシイが、試しに東京から時刻表を追ってみる。

「あっ、コレ行けるわ」(;´∀`)

日帰りで、しかも鈍行で行ける事実が判明した時点で、自分の中で"やるしかないフラグ"が立った!


・計画~導入


東京から只見線を日帰りで乗りに行く場合、ぶっちゃけ条件的には結構容易だった。
しかし、それは新幹線を利用した場合の話。東京から鈍行だけで行くのはなかなか無謀である。
時刻表を睨みながら葛藤し、今回、私は大宮を出発点として"右回り"で只見線に乗るルートを考えた。
「只見線 日帰り」とググると、このルートの旅行記が結構出てくる。だってコレ以外思いつかないもん(笑)。

「6時台大宮出発→高崎線→上越線→只見線→磐越西線→東北本線→23時台大宮到着」

大宮からまず高崎線で高崎へ向かい、上越線を乗り継いで国境を越え、只見線の起点小出へ行く。
小出からはお目当ての只見線を完乗し、会津若松で間髪入れずに磐越西線に乗って郡山へ。
郡山からは東北本線をひたすら南下して大宮へ戻り、終電寸前の時間帯に帰宅する。
結果的に、総所要時間17時間におよぶ鬼畜行程が完成した。

始発直後で行って終電寸前で帰る。途中で列車が遅れたら行程はすぐ破綻。かなりキツイ旅程だ。
早朝5時、武蔵野線に乗って千葉を出た。南浦和で京浜東北に乗り換え、大宮へ。
鬼畜の日帰り旅が今始まる。



・高崎線 [大宮~高崎]
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旅の出発地は巨大ターミナル大宮!今日の23時台に、私はここに帰ってくる予定である。
大宮からまず、高崎線に乗って高崎へ向かう。6時39分発の高崎行き鈍行だ。
平日と休日で時刻が若干違う列車もあるようだが、どちらにしても6時台なら問題ない。
似通った車両の宇都宮線に乗ってしまうと、その場で即刻試合しゅーりょーなので注意されたし!

既に通勤ラッシュに突入しており、普通車は混雑することがわかってたのでグリーン車に乗り込んだ。
早朝、朝飯を食べる時間が無かったので、貸しきり状態の車内で朝飯を済ませる。


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高崎線の車窓はつまらないといわれるが、意外とそんなことはない。
グンマーが近づくごとに遠くに山々が見えてきて、旅気分を盛り立ててくれるよ。
4月下旬なのですっかり春景色。普通車は満杯だがグリーン車はガラガラである。

旅行のときだけはグリーン車は使える存在。18切符でも利用できるってのがミソ。




太平洋側は晴れているが、日本海側は雨が降っているようだ。予報だと、今日はかなり気紛れな天気らしい。
スマホのアプリで各地のリアルタイム天気を調べてみると、晴れてるところあれば曇ってるところもある。
只見線だけは絶対天気の良い日に行こうと考えてたから、どうにか晴れてほしいと願う。

昼過ぎまでに雨雲が去ってくれればいいのだが……。既に無理臭が漂ってるぞ。
関東平野をひた走り、烏川を渡って、上信電鉄の電車が見えてくれば間もなく高崎だ。


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8時過ぎに高崎へ到着。千葉県民は高崎線一択だが、西東京の人なら八高線で高崎に来るのもいいかも。
八高線の乗り場(0番線)を見たら、見たことない色の気動車が停まっていた。
何時もの緑のやつじゃなくて、白地に赤。リバイバルかな??

高崎からは上越線だ。ひとまず水上行きの鈍行に乗って水上を目指そう。



・上越線 [高崎~水上]
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8時24分発の水上行き鈍行は国鉄電車だ。8時24分発より後の列車だと、即刻旅程破綻なので注意したい。
移り変わりが激しい関東において、高崎近くの路線では未だにこんな古い電車が走っている。
東海道本線で昔走っていた湘南電車と色は同じ。もちろん、座席はボックスシート主体だ。
3両編成で、車内は出発時点でガラガラ。ボックスシートに悠々と居座る。

列車は定刻通り高崎を出た。新前橋でちょっとだけ乗客が入れ替わる。
何のことなく平野を快走し渋川へ。地元客がドッと降りて、さらにガラガラに。


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渋川から列車は平野を脱して、山の中を利根川と交差しながら進んでいく。
絶景区間を過ぎ、沼田で既に貸しきり状態。車内は私以外に一人いるだけとなった。

こっちの天気は快晴に近いが、国境の山脈の向こうは分厚い雲で覆われている。
今から向かう只見線の起点は、あの険しい山々の向こうにある。
見るからに怪しい空模様に、ちょっとためらってしまう↓




「今ならまだ引き返せる……!」雨の中、わざわざ日帰りで行ったってしょうがないだろうと。
高崎まで引き返し、未乗の上毛/上信電鉄を攻略しようとも考えた。
しかし、ここまで来たんなら行くしかないだろう。

午後以降唯一「只見町晴れ」の予報を出す、民間企業ウェザーニュースに全てを託す。
気象庁に対向して我が道を行ってる感が好きです。ブラザー俺は信じてるぜ。


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不安な心境の中、水上に定刻通り到着。列車を降りると、外は天気雨がパラついていた。
風が少し強く、山の方からヒューヒューと不吉な風が吹いてくる。
この先の天候は「神のみぞ知る」ということか。

上越国境を越える列車は少ない。6時台に大宮を出発したのも、全ては国境越えの列車に間に合わせるためだ。
跨線橋を渡って向かいのホームへ。意外にも、真新しい新型電車が停まっている。



・上越線 [水上~小出]
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水上から先、国境を越える上越線の定期列車は一日五本しかない。国境間の交流が薄く、利用者が少ないためである。
この区間、一ヶ月前までは国鉄電車だったのに、何の前触れもなく新型車に代わったようだ。
列車の編成は以前と変わりないが、座席はロングシートとボックスシートが半々ずつになっている。
車内の雰囲気は東京の通勤電車と全く変わらない。真っ白い化粧版に見慣れた座席、そして黒いつり革。

ボックスシートのピッチは国鉄車よりも広い。旅情は薄れそうだが、快適性は新型の方が上か。
9時47分、ガラガラの状態で長岡行き鈍行は出発する。


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列車は水上を出ると谷底を縫うように進んで、間もなく国境越えの新清水トンネルへ突入する。
トンネル手前には、どう見ても廃墟にしか見えない観光ホテルが現れる。
実際、数年前に廃業したそうだ。

今の時代、大型ホテルの経営は厳しいのか……!怪しい空模様の中、列車は長い暗闇に入った。



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JRの新型電車は不協和音を伴った独特の音を発していて、トンネルの中だとちょっと不気味だ。
上越国境を抜けると天候がガラッと変わるが、果たして今回はどうか??
祈るしかない。こればかりは、お天道様に祈るしかない。

轟音立てて暗闇の中を疾走し、列車は長大トンネルを出る。





国境の長いトンネルを抜けると絶望しかなかった。

まあそりゃそうだろなーと、普通に予感が予感どおり的中した。
新清水トンネルを抜けた先で待っていたのは、鉛色の空と霧深い山景色。
半ばわかってはいたのだが、これからどうなるかは全くわからない。各地の天気がマチマチなのだ。

周りの地域は晴れてるらしいから、取り敢えず、今回は可能性一つに賭けてみよう。


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10分前の景色が嘘のよう……!って、3ヶ月前の北上旅行記でも全く同じクダリをやったよな(苦笑)。
見渡す限り薄暗く、霧深いが、これはこれでいい感じ。

毎日こうだと欝になりそうだが、陰影深く、幻想的な空模様が雰囲気を駆り立てる。
淡々と走り続け、越後湯沢に着くと一気に乗客が増えた。ほぼ全てが高齢の行楽客である。
ロングシートが増えた新型車に若干違和感を感じるようで、しぶしぶロングシートに座る団体客を見かけた。


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11時10分、列車は定刻通り小出に着く。これで、とりあえず只見線の列車には間に合う。
一日のうちに只見線を全線乗り継ぐパターンは極めて限られていて、
小出側から出発する場合、今年度のダイヤだと7時58分発と13時11分発の列車しか術がない。
この二本を逃すと、終点の会津若松まで乗り通すことが不可能となってしまうのだ。

只見線の列車出発までおよそ二時間ある。せっかくなので、ちょっと辺りを散策してみようか。
小出駅は中心街から離れてるようで、駅前はコレといったものが無い模様。




駅を出て左の道を抜けると小出橋という橋が架かっていて、橋を渡った先にここ一帯の中心街がある。
小出駅のすぐ横を流れる川は魚野川という。信濃川の支流で列記とした一級河川である。

橋の上で景色を眺めていると容赦なく雨が降ってきたので、橋を渡って南方にあるコンビニで昼飯を調達し、
駅に戻って待合室で昼食休憩。「長野も新潟も福島も晴れてるのに何故ここだけ雨なのか!?」と、
理不尽にも思える天候を悔やみつつ、弁当とおにぎりを腹の中に掻き込んだ。


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二路線が乗り入れてるとはいえ、典型的な田舎の駅って感じだ。それでも改札に係員がちゃんといる。
昼飯を食べ列車を待つ傍らで、高齢の地元民が訛り一点張りで話してるのが聞こえる。
どう耳を立てても何を言ってるのか全くわからない。ここは異国なのか??

しばらくすると気動車の入ってくる音が聞こえたので、改札を通って只見線の乗り場へ向かう。
待ちに待った只見線初乗車。果たして、どんな道のりが待ってるのか……!



・只見線 [小出~只見]
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奥会津の秘境路線、只見線。本州最北の五能線と肩を並べる、東日本の絶景ローカル線だ。
その人気ぶりは観光雑誌にも載るほどで、特に18切符シーズンは混雑するという。
只見線は元々二つの盲腸線を繋げて一本の路線にした経緯があり、全通は1971年と歴史は浅い。
全線に渡り走るのは鈍行のみで、本数も全国屈指の少なさ。正に横綱級のローカル線である。

2011年の豪雨被害で、只見線は途中区間(只見~会津川口間)が長らく不通状態となっている。
不通区間は代行バスに乗って進む必要があるのだが、バスもまた本数が少ない。
乗り継ぎ時間が短く不安だが、取り敢えず只見行きの列車に乗って先を進もう。

13時11分発の只見行きは二両編成の国鉄気動車で、ワンマンでも事足りるのに車掌が普通にいる。
いまどき珍しい、旧態然とした鉄道模様だ。車内はほぼ全てボックスシートである。
定刻が来るとエンジンをガラガラ唸らせて、只見行きは出発した。


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小出からはしばらく素朴な景色が続く。出発してすぐ川を渡り、典型的なローカル風景の中を行く。
周りに聳えるのは山ばかりで、分厚い雲が被っていて全容を把握できない。
息苦しい空模様だが、秘境へ突入するにはお誂えの天気だ。

列車の速度は、超絶遅い。多分、ギア3段で全速気味に漕ぐママチャリのスピードよりも遅い。
これぞ"THE 鈍行"と言わんばかりの鈍足で、勾配を上りながら山奥へ入っていく。




この区間、列車は破間川と何度も交差しながら進む。両手の山々は既に目前に迫っている。
車内はガラガラで、ほんの僅かな地元客が数駅間乗っては降りるだけ。
山間の僅かな平地を辿って走ってるのがわかる。


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右手に破間川が真っ直ぐ並行し始めると、列車は間もなく拠点駅の大白川へ到着。
半世紀前まで、只見線はここが終着駅だったという。

駅のすぐ横は川が流れている。大白川から先で待ち構えているのは、新潟~福島間に聳える峠「六十里越」だ。
峠越えとはいえ、只見線は長大トンネルで抜けるようだ。隣駅まで20kmあり、所要時間は30分!
長ーい長ーい、峠越えだぁー。




大白川を出ると人家が僅かに見えるが、それも本当に最初だけ。
あっという間に、人家一切無しの秘境の中へ。鬱蒼とした谷底を川とともに進む。
途中、川を渡るところで、自然に還りつつある廃橋が見えた。アレはなんなんだろうか??

上り勾配をひたすら上っていくと、列車は全長6359mの六十里越トンネルへ入る。
このトンネルを抜ければ福島の地へ出るはずだ。



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10分以上かけて二本の長いトンネルを抜けると、山と山の間から、僅かに青空が見え始めた。
少しずつではあるが、雲が引いてきたらしい。絶望フラグは緩慢に覆りつつある。
ウェザーニュース、やるじゃないか!ブラザー俺は信じて(ry

ダム湖の脇を走ると列車は高度を下げて、素朴な街中へ入っていく。
豪雪の街、只見だ。


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14時28分、ガラガラの状態で列車は終点只見に到着する。降りると、辺りは静寂に包まれていた。
線路が延びているが……ここから先しばらくのところで橋がまるごと流されてしまったらしく、
現状、列車で先に進むことは出来ない。代行バスしか進む術はない。
バスの乗り継ぎ時間は僅か4分。列車画像を撮った後はすぐ駅舎の方へ移動する。

たった四人の乗客が列車を降り立ち、淡々と乗り場を離れていく。
只見止まりの人が二人で、先へ行く人が私含めて二人。なんて小規模な人間模様なんだ!w

「バスはこちらですよー!」駅員さんに声をかけられたので、導かれるまま、私は代行バスに乗り込んだ。(→後編へ続く)

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只見線を日帰りで行く (後編)

「只見線日帰り強行旅 2/2 (只見~会津川口~会津若松~郡山~黒磯~宇都宮~大宮)」

[2016/4/22]

余談だが、只見は"柏の姉妹都市"だそうだ。何故かは知らないが、一応そういうことになっている。
柏に対抗意識を持つ松戸市民としてはちょっと腑に落ちないところがあるが(笑)、
ともかく、私は早朝から鈍行に乗って只見までやってきた!

大宮から日帰り鈍行で只見線を制する旅も、ようやくターニングポイントに差し掛かる。
只見からは鉄道が不通状態なので、代行バスに乗って先を進もう。



・只見線 (代行バス) [只見~会津川口]
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2011年夏の豪雨被害で、未だ復旧の目処が立っていない只見線の只見~会津川口間だが、
不通になってから代行バスが設定されており、全線通しで行くための手段が確保されている。
純然たるJRの代行バスなので、18切符やその他フリー切符でも乗車可能だ。
本数は鉄道と同等の少なさであり、乗り継ぎ時間を事前に確認しておいた方がいいだろう。

代行バスの経由するルートは、只見線の線路と並行する国道252号だ。
奥会津の生命線といえる国道である。只見~会津川口間を車で行く場合、この国道を除いて全く選択肢がない。
只見到着後、声をかけてきた駅員さんに導かれて駅を出ると、目の前にマイクロバスが停まっていた。
残り二分ほどで出発するらしかったので、大人しく乗り込む。乗客は私含めて二人だけ。

運転士は地元??の女性の方だろうか。「今日は二人だけみたいですねぇー」と、
駅員さんとこなれたやり取りが行われた後、バスは定刻通り只見を出発する。


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国道252号は只見線とずっと並行しているので、バスの中から置き去りにされた線路が見える。
見た感じ、不通以来、何も手が加えられてなさそうだ。錆び付き、朽ちてしまっている。
ボロボロの線路と対比して広がるのは、日本の原風景といえる奥会津の景色だ。

復旧の目処が立ってないというのは、こうして実際に眼にして、正に"言葉通り"なんだと知る。
今のJRの消極的な姿勢からみると、復旧の可能性は正直言って限りなく低い。絶望的である。
「廃線にしたい」ってのがJRの本音なんだろうが、それで地元は納得しないだろうな。


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途中駅の最寄バス停へ順々に停まっていく代行バスだが、特に乗り込んでくる乗客はいない。
バスの車窓から見えるのは、際どいところに敷かれた只見線の線路と、広大な只見川。

背後の山が牙を向けば、あっという間に途切れてしまいそうな鉄路が見える。
この区間の只見線は、幾つものシェルターと橋梁によって成り立っていたようだが、
その全てが放置されて露のままになっている。美しい景色の中にも無情な現実があった。


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どうやらウェザーニュースの予報は半ば当たったらしく、空は晴れの兆候を見せつつある。
絶望から希望へ!ブラザー俺はお前を信じてよかったよ。

只見からは、会津蒲生~会津塩沢~会津大塩~会津横田~会津越川と、会津まみれの駅が続いている。
実際、只見線の時刻表を見ると「会津」が多すぎて何が何だかわからなくなってくる。
全36駅のうち「会津」を冠した駅が17駅!会津推し感がぱねぇ。




本名ダム上の橋を渡るところで、無残にもプッツリと途切れた只見線の橋梁が見えた。
あんなところにまで豪雨の猛威が及んで、橋がまるごともぎ取られてしまったんだと思うと……!
恐らく、手前のダムから尋常じゃない量の大水が押し寄せてきて、全部持ってかれてしまったんだろう。

生々しいとしかいいようがない。よく見ると、橋の根元に激流の禍々しい痕跡が残っている。


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国道を延々と走り、代行バスは会津川口へ到着した。バス到着が15時22分で、次の列車の発車が15時27分。
只見に続き、乗り継ぎ時間が少ししかなく、僅か5分のうちに乗り継がなければならない。
効率良く乗り継げるからいいけど、もうちょい余裕ある時刻にしてほしいなぁ。

バスを降り、すぐに改札を通って、只見線の乗り場へ向かう。
川のすぐ横にホームがある。会津若松行き鈍行がエンジンを唸らせて出発を待っている。



・只見線 [会津川口~会津若松]
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風光明媚な只見線の中でも一番華やかなのが、これから行く会津若松側の区間である。
紅葉シーズンになると観光列車やSLが走る当区間は、小出側と比べて列車の本数が多いようだ。
ただ、多いといっても1日6~7本なので、途中下車は難しい。基本通しで乗るのが無難だろう。
会津川口~会津若松間の所要時間は二時間弱。"あのCM"に出てくる有名な橋も、この区間にあるらしいぞ。

小出側と同じく、二両編成の国鉄気動車。只見線といえば、この”白地×緑"の気動車である。
前側の車両がオールロングシートで、後側の車両がボックスシートになっている。
車掌は相変わらず健在。合理改革の匂いが全くしないのが凄い。


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聞こえてくるのは、風の音と、古ぼけた気動車の音だけだ。

駅のすぐ横は只見川が流れていて、満々と水を湛えている。
こんな風景、眼の前に差し出されて、ボキャブラ難民の私は何て言ったらいいんだ??
「素晴らしい」としか言いようがないじゃないすかこんなん。なんもいえねぇよ。

たまらない。ローカル好きにはたまらない景色だ。しかし悲しいかな、出発まで残り2分という現実が横たわる。
「せめて10分だけでもココにいさせて(はぁと)」なんてワガママは、只見線には通用しない。
仮にもこの列車を逃したら、次来るのは3時間半後である。極端すぎるっちゅうねん!




ボックス席に一人ずつ良い塩梅に埋まったところで、会津若松行きは定刻通り出発した。
今乗ってる列車に冷房は付いてるのだが……数年前まで只見線は非冷房だったらしく、
その頃の習慣が残ってるのか、地元の学生が普通に窓を開けている。
さっそく私も窓を開け放ってみた。東京ではこんなこと絶対に出来ない。

会津川口から、列車は只見川の畔をひた走っていく。すぐ下は川だ。少し左にズレれば落ちそうなほど近い。
風景を遮るフェンスとか、そういうのも一切無いようで、左手に開放的な景色が広がる。
川辺に張り付く集落が見えてくると、列車は一旦只見川のもとを離れた。


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ここは越後山脈の真っ只中であり、見渡すばかり山しかない。
旅中、私はスマホで位置情報を確認するのだが、地図上に表示されているのは、
どう見てもマイナーなありとあらゆる「山」と、只見川と、只見線と、国道252号だけだ。

一本ずつの川と国道と鉄路が、夥しく聳える山の中を縫うように進んでいる。
なんて過酷で極端な場所なんだろうか。


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深い渓谷の底を縫って走る。小さな集落の真っ只中にも深い谷があって、川が流れている。
宮下集落を抜け、大谷川と只見川を渡ると、列車は会津西方へ。
ここから、列車は隧道を潜りながら勾配を上っていく。

会津西方から会津桧原の間で、例の有名な橋「第一只見川橋梁」を渡った。
夏になると、ここ一帯の只見川は川霧に包まれることが、しばしあるという。



「第一只見川橋梁の車窓 (オンマウス:滝谷川橋梁の車窓)」

会津桧原を出るとちょっとした峠を越え、トンネルを出てすぐのところで滝谷川を渡る。
ここの橋、高度感がすごい。川どころか針葉樹すらも下に見下ろしながら、列車は通過した。

滝谷からは山の裾の際どいところを辿るようにして進んでいくが、あまり眺望は良くない。
再び上り勾配に差し掛かり、エンジンを吹かしながら列車は高度を上げる。
木々の隙間から、雄大な景色が見え始める。


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ずっと川沿いを行くのかと思いきや、只見線はバリバリの山岳路線だったのだ。
鬱蒼とした山の中を抜けると只見川が近づいてきて、列車は郷戸へ到着。
郷戸からは素朴な風景の中を走っていく。




会津坂本が近づくと、沿線に人家が増えてきた。
秘境地帯は既に抜けた印象だが、この辺りでも相変わらず高いところを走る。
会津柳津の駅前には、昔、只見線を走っていたと思われる"主"が静かに佇んでいた。

ずっと並行していた只見川は会津坂本を出たところで遠ざかり、車窓から見えなくなってしまう。
山林の中へ入り塔寺を出ると、列車は七折峠に差し掛かり、急勾配を下っていく。




塔寺から奥会津を脱した列車は、地続きで想像以上に高い地点を通って、
左手に会津の街並みを見下ろした後、山の腹を辿って会津盆地へと駆け下りる。
この間、僅か数分。たった数分で、列車は峠を抜けて盆地へ降りてきてしまった。

会津盆地へ下りてすぐの会津坂下で、地元の学生がドッと乗り込んできた。
ガラガラだった車内が満員状態に。空は何時の間にか晴れ渡っている。


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会津坂下からはU字型に進路をとり、遠くに山々を見渡しながら田園をひた走っていく。
みるみるうちに人家が増えてくると、列車は会津鉄道と接続する西若松へ。
ここまでくれば、会津若松は目と鼻の先だ。

七日町を出たところで、終点到着のアナウンスが入る。
特に何のトラブルもなく、定刻通り、ホームへと滑り込んだ。



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会津若松、到達!!

17時20分、列車は終点の会津若松に到着する。小出から4時間強に及ぶ只見線の旅が、無事終結した。
学生に混じってホームへ降り立つと、辺りは夕暮れの中。鬼畜な日帰り旅は佳境を迎えつつある。
乗客を降ろした気動車は、何故か「野沢」という行先を掲げて、すぐに走り去ってしまった。

今の時間、野沢行きなんて列車は無かったはず。運転士さんがミスったのかな??
だとしたら……お茶目だな!(笑)




「なんで今まで乗らなかったのか」ってほどに、只見線は素晴らしい路線だった。
完乗してすぐだがリピート確定。次は、真冬の日に訪問したいなーって思う。

かれこれ、鉄道で3回訪れている会津若松。東京からギリギリ日帰りで来れる場所である。
ここからは帰路だ。大宮まで、鈍行を延々と乗り継いで帰らねばならない。
自宅到着は夜24時半。エグイ!キチーけど最後まで頑張ろう!

会津若松の滞在時間は約50分。今日中に夕食にありつける最後のタイミングである。
一旦改札を出て駅そばを食した後、私は磐越西線の鈍行を待った。



・磐越西線 [会津若松~郡山]
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歴史の古い磐越西線で、まずは郡山へ。大宮まで5時間、自宅まで実質6時間強の道のりが幕を開ける。
18時12分発の郡山行き鈍行は二両編成で、ロングシートとクロスシートが混ざった構成。
次第に立ち客が出てきた時点で、列車は会津若松を発車する。

この区間の磐越西線の道のりは特徴的で、会津若松からS字の急カーブを何度も繰り返して進んでいく。
如何にも「地の利を活かしました」って感じの線路の敷き方だが、これは高度を稼ぐためだ。
旅は佳境だが、空も佳境を迎えつつあった。

急カーブを下る中、磐梯の山々をバックに、陽が真っ紅に染め上がっていく。



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ブラザァァァァアアアアアーーーー!

曇りの予報を出す気象庁を覆し、今日、ウェザーニュースの予報は大どんでん返しを起こした。
乗客一同が釘付けになるほど、空が真っ紅に染め上がっていた。

なんなんだコレは……!こんな現実離れした夕日、初めて見たぞ。





ナアナアのままに終わりそうだった日帰り旅なのに、当の車窓はデレデレだ。吸い込まれそう。
アート設定とか着色を施したわけでもないのに、カメラに収まったのは奇跡的な夕景。
「美しすぎる!」っていう大げさな表現を抜きにしても、リアルを前提にしても、
今日の夕日は何だか言葉にならない……ふつくしい……!

S字カーブを抜けたところでファンタスティック夕景は途切れてしまい、真っ暗になってしまう。
あとは、車内でひたすら耐え忍ぶのみとなった。



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ウトウトするうちに列車は郡山へ。郡山からは、東北本線を乗り継いで南下しなければならない。
水郡線の水戸行き最終列車は既に出てしまっているので、頼れるのは東北本線のみだ。
黒磯行きの乗り場へ向かうと行列が出来ていた。学生や仕事帰りの人で一杯である。
ホームの端から端まで、人、人、人。数時間前は人すら見かけない秘境地帯にいたってのに。

行列の中で色々考えてるうちに、東北本線と磐越東線の列車がホームへ入ってきた。
「うちらの電車もああいう豪華なのにしてくんないかなぁ……座りたいよぉ」
サブカル女子大生が、磐越東線の気動車を見て自虐気味に呟く。
通勤・通学帰りの気だるい空気が、満杯の人の中で拡散していく。



・東北本線 [郡山~大宮]
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満員状態で郡山を出た黒磯行き列車は、数駅過ぎるごとに乗客が減っていった。
最初はドア脇に立っていたが、あっという間に空いてきたので座席は難なく確保。
新白河で大多数の地元客が降りていき、ガラガラになったところで列車は黒磯に着く。

若干くたびれながら長い跨線橋を渡る。向かい側のホームで宇都宮行き鈍行が待っている。
黒磯を境に東北本線の表情は一変するから、私は黒磯での乗り継ぐ手間が好きだ。




広い駅構内を持つ黒磯駅。少しずつ通勤風味を増してきたが、21時前なので人影はまばらである。
並行する新幹線を尻目に地に足据えて出発を待つ。それが鈍行の宿命なのか。
もちろん車内はガラガラ。ロングシートに居座ってやり過ごすことに。

20時52分、宇都宮行き列車は黒磯を出た。早朝の出発から既に15時間近く経っている。
ガラガラの車内に、酒と柿ピー片手のリーマンがちらちらと。夜の常磐線となんも変わらないw


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21時44分、列車は定刻通り宇都宮へ到着。ここでようやく上野行きの列車に乗り込む。
上野行きにありつけばこっちのもの!行先に上野ってあるだけで安心するから不思議だ。
15両編成の通勤電車で、車内は空気状態。夜遅くの上り列車なんて大体こんなもんである。

クロスシートでぐったりするうちに、あっという間に時間が過ぎていく。
ぶっちゃけ、もう書くことがない。ネタになる以前に、ただの帰路同然と成り果てた。




会津若松から1時間20分、郡山から1時間、黒磯から50分、宇都宮からさらに1時間20分の道のりを経て、
23時を過ぎたところで、上野行き列車は大宮へ到着する。

大宮から大宮へ総距離600km!17時間の鈍行旅に、終止符が打たれた。



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(二度とやらんけど)普通に楽しかったです。

大宮到着は23時11分。何もトラブルに巻き込まれることなく、私は大宮に帰ってきた。
夜も人で一杯の巨大ターミナルを眺めていると、17時間なんてあっという間のようにも思えた。
明日から、何時もの生活に戻るんだ……。やだなー。でも、日帰りだから気分はこざっぱりしてる。
大宮からは京浜東北と武蔵野線に乗って24時半に帰宅。翌日、私は眼を擦らせて何時もの日常に戻った。

・旅の総運賃:11830円(北海道&東日本パス+グリーン車代)
・乗った乗物の数:鈍行9本+代行バス1本
・総距離/所要時間:約600km/17時間


キツイけど、普通に成功した鬼畜の日帰り旅。金無くても"体力"さえあれば何時でもやれます。体力無かったら地獄確定。
今回の強行訪問で、只見線は「乗るだけでも価値のある路線」だと確信した。言い過ぎじゃない…と思うよ。
いざ18切符を手に、運賃2370円/片道17時間の"鈍行ロマン"を、掴み取ってみては如何だろうか。

旅を終えた後、知り合いに話したら爆笑された。「お前馬鹿だろww」当たり前だ。
(完結)


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