鈍行列車一人旅

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伊豆半島縦断の旅

「伊豆半島日帰り縦断 1/3 (東京~熱海~伊東~伊豆急下田~石廊崎港口)」

[2015/11/30]

「伊豆半島を日帰りで縦断したるぜ!」

伊豆半島。東京からだと、小田原を過ぎた先にある南へ突き出た半島のことである。
今回は伊豆半島を舞台にして、日帰りで公共交通路線での縦断を決行したいと思う。
あくまで"日帰り"ってとこが今回の旅のミソで、当然無駄な寄り道は一切できない。

専ら記録するだけに終始した、しっちゃかめっちゃかな日帰り旅が幕を開ける!


・計画~導入


「往路 (画像左):伊東線→伊豆急行線→石廊崎線バス→徒歩→石廊崎到達」
「復路 (画像右):天城線バス→徒歩→天城越え→天城線バス→駿豆線」


伊豆半島を南北に縦断するには3通りの経路があるといえる。西海岸を辿るか東海岸を辿るか中央部を突っ切るか、
そのいずれかの経路で末端へ向かおうと私は考えた。往路は伊東線と伊豆急を辿って下田へ向かい、
そこから路線バスで伊豆の最南端へ向かう。最もベターなルートといえるだろう。

往路で東海岸を辿ったら復路は違うルートを行きたい。伊豆最南端で知られる石廊崎を観光したら元来た道を戻り、
河津から路線バスに乗って山中をぶち抜く天城峠を越える。伊豆最大の難所で知られる有名な峠だ。
峠寸前でバスを降り自らの足で天城峠を越えたら、最寄りのバス停から再びバスに乗って北上し、修善寺へ。
修善寺からは伊豆箱根鉄道の駿豆線を乗り通し、新幹線に乗って帰路に着く予定である。

冬至に近いこの時期に、千葉から日帰りで伊豆を縦断するのは少し無謀かもしれない。
無謀でキッチキチな行程が、後に致命的トラブルを起こすフラグとなったか!
何はともあれ、早朝5時過ぎに私は自宅を出て東京駅へ向かった。



・東海道本線 [東京~熱海]
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東京からまずは東海道本線の鈍行に乗って、熱海ヘ向かう。
往復新幹線だと旅費がキツイので、往路に限り鈍行で伊豆半島へ向かうことにした。
6時18分発の熱海行きはガラガラで、大都会なのにドアが半自動になっている。
これは車内保温のためだろう。ローカル地区の名物である半自動が東京直下で採用されてるのが意外だ。

列車は東京を出ると新幹線や山手線と並行してソロソロ走り、品川を出たところで一人立ちする。
川崎辺りで日が昇ってきて、雲多めの空が広がった。京急の競争区間を過ぎ、横浜へ着くとドッと乗客が増える。
今は通勤時間帯真っ只中だが、混むのはいずれも東京へ向かう上り列車だろう。
とはいっても下りの列車もそれなりに混むのは確かで、戸塚~大船で結構な混み具合になってきた。


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平塚辺りを境に車内は空いてきて、御殿場線と接続する国府津で乗客がドッと降りていく。
左手には太平洋が見え始め、前方には険しい山々が見えた。天下の箱根の山である。
小田急と接続する小田原で、車内はガラガラになってしまう。

小田原から先、東海道本線は平野を出て、箱根の山を掠めるようにして走る。
やがて列車は相模湾沿いに出た。長大な東海道本線の中でも、相模湾沿いの車窓はハイライトの一つだ。
この区間は高度が高いところを走るので、眺望は良い。天気は予報を裏切ってどんよりとした曇り空。


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湯河原を過ぎると、眼前に聳える山々へ突っ込んでいき、長いトンネルを潜る。
長大トンネルを抜ければ、熱海の地はすぐそこである。平野は既に途切れており、
車窓に山の裾にへばりつく住宅群が見えた。こういう風景、大好き。

8時13分。二時間弱の道のりを経て列車は終点の熱海へ到着する。
熱海からは在来線、伊東からは私鉄線、下田からはローカルバス路線を経由して最南端を目指していこう!



・伊東線/伊豆急行線 (にゃらん号) [熱海~伊豆急下田]
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熱海から西へ進む東海道本線を尻目に、南へ出て伊豆半島を一路突き進む路線がある。これが伊東線/伊豆急行線だ。
元々国鉄が下田まで開通させようとしてた路線だが、後の緊縮財政政策によって伊東までの開通に留まる。
この伊東線を引き継ぐかたちで、私鉄の伊豆急行が伊東から線路を延ばして下田まで開通させた。
両路線はともに観光路線として開通した経緯があり、東京から優等列車が盛んに乗り入れている。

東海道本線を降りて1番線へ向かうと、伊豆急の直通列車が停まっていた。
「リゾート21」。今から30年前に運行を開始した、リゾート列車のパイオニアである。
リゾート21の運行時刻は日によって変わり、使われる車両の種類も数種類あるようだが、
今から乗り込むのは「にゃらん」のヘッドマークが掲げられた「にゃらん号」だ。


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ぬこの誘惑には勝てないよ。

にゃらんは某旅行誌の公式キャラクターで、今年11月からコラボ企画を実施している(来年3月まで)。
ぬこってなんでこんなかわいいんだろ。号車札、広告、何から何までぬっこぬこパラダイス。
一応設定上では、にゃらんも旅をしていることになっている。川崎在住で公式ツイッターアカウントもあり。

色々なCMに出演しているが、声優をやってるのはあの安斎さんだそうだ。
タモリ倶楽部の空耳アワーでハガキを読み上げている、あの人である。


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にゃらん号は7両編成。通常のボックス席の他、列車先頭には名物といえる展望席があり、
海に面したロングシートや憩いのスペースもある。座席の種類はバラエティ豊かだ。
普通の鈍行で使われるものとは思えない豪華仕様。

にゃらんの装飾に囲まれた3号車に乗り込んだ。平日なので車内はボチボチの乗車率である。
8時24分発の伊豆急下田行きは、年季の入った音を立てて熱海を発車した。
熱海からしばらくは伊東線の区間だ。


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伊豆半島は険しい地形と温泉源が染み込んだ軟弱な地層を抱えているため、鉄道建設は難工事を極めたという。
温泉が染み込んだ地層を隧道でぶち抜くのだから地獄のような所業だ。
列車は熱海を出ると東海道本線と分かれ、早速トンネルへ突入した。
二本のトンネルを抜けると、隣駅の伊豆多賀へ到着する。

山々が険しくなってきた。線路の高度が高く、左手に風光明媚な景色が広がる。
伊豆多賀を出ると一旦高度が下がり、網代から市境を貫く新宇佐美トンネルを抜ける。
新宇佐美トンネルを抜け、宇佐美を過ぎると、列車は海沿いスレスレをひた走っていく。


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8時47分、列車は伊東へ到着。
ここから列車は伊豆急行線の区間へ入る。
伊豆急行線は地図上だと海沿いをずーっと走っているが、実際海が見える区間は半分くらいらしい。


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伊東を出ると列車は高度を上げて、山の裾を縫うようにして走る。長いトンネルを抜けると川奈へ着く。
川奈からはあまり見栄えのしない山あいに入り、隣駅の富戸へ。
ここで上りの鈍行と交換した。

この区間の車窓はそこまで映えないが、ところどころで眺望の良い景色が広がるから侮れない。
観光拠点の伊豆高原を出ると国道135号と交差し、相変わらず高度が高いところを駆ける。
伊豆北川では左手に絶景が広がった。トンネルが多く、トンネルに入っては出て駅に到着というのを繰り返す。


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片瀬白田から、列車はようやく海沿いに出た。
この区間に限っては本当に海スレスレだ。海沿いを走った後、列車はトンネルを抜けて伊豆稲取へ。
河津からは海沿いを離れ、内陸の方へ入っていく。西武に邪魔され伊豆急が土地買収できなかった区間である。

伊豆急は運賃が高いことでも有名だが、高額な運賃は路線の莫大な維持費のためなのだろう。
軟弱な地層を何度も高架と隧道でぶち抜いてるのだ。金がかからないわけがない。


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終点近くまで来ると山々は一層深くなり、伊豆南部の険しさを物語る。もはや山岳路線である。
山間を縫うようにして進み、伊豆急最長の隧道である谷津トンネルを抜ける。
稲梓を出てすぐのところで、列車は下田街道(国道414号)と合流した。


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9時53分、にゃらん号は終点の伊豆急下田へ到着した。
ここは伊豆の鉄道の末端。昔は下田から最南端の石廊崎まで延伸させる計画があったそうだが、
計画だけで実現はしていない。ということで、下田からは路線バスに乗って最南端を目指そう。

伊豆南部の拠点なだけあって、観光客で賑わっている。外国人旅行客も多い。
"ぬこ列車"に別れを告げた後、私は下田駅前のバスターミナルへ向かった。



・南伊豆東海バス石廊崎線 [下田駅~石廊崎港口]
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伊豆半島のバス路線を網羅する東海自動車の傘下、南伊豆東海バスは半島南部の路線を担うバス会社だ。
下田と河津を拠点として路線が延びているが、これから乗るのは下田駅を起点とする石廊崎線である。
伊豆最南端へ向かうこの路線は現時点で1日10本以上出てるので、鉄道からの乗り継ぎは比較的容易だ。

石廊崎の現時点最寄となる、石廊崎港口までの片道運賃は890円。約40分の道のりである。
バスの運行区間は基本「下田駅~石廊崎港口」である。朝夕に限り石廊崎港まで行ってくれる便もあるが、
日中は全て石廊崎港口止まりとなっている。なので、石廊崎へ行くには港口から岬まで歩くのがデフォといっていいだろう。

下田駅を出ると立派なバスターミナルがあった。全部で10番線の乗り場が設けられている。
10時ちょうど発の石廊崎港口行きは、私含めて5人だけ。休日だと観光客で混雑するらしい。
バスは下田を出ると国道136号へ入り、狭い二車線をひた走っていく。


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起伏の激しい土地柄故に道が狭く、カーブや勾配が多い。まさにローカルバス的な道のりである。
銭瓶峠を越え坂を下ると、バスは山間を延々と抜けていく。
車の通行量は多い。バス停が引込み線に設けられていると、バスは乗降客がいなくても停車する。
時間調整か、後方にやむなくして溜まった一般車に対する配慮だと思う。

県道との分岐点で、バスは国道を出て県道16号に入った。
休暇村へ向かうと元来た道を引き返して青野川を渡り、再び県道のもとへ。
青野川の河口を曲がり短い隧道を抜けたところで、県道は半島突端の海沿いに出た。


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最果てバス路線ならではの絶景が続くこの区間。断崖と海の間を寂れた道が続いている。
天気はどんよりした曇りだったが、有難いことに、ここにきて急に日が出てきた。
晴れ渡る空の下。ローカルバスが最南端向けて海沿いの路を行く。

最初は地元客も乗っていたが途中で降りていってしまい、最終的には私一人と老夫婦のみが残った。
ゴツゴツした断崖脇を抜け小さな集落を通り過ぎると、終点石廊崎港口はすぐそこだ。


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着いたぞ!石廊崎港口!!

10時38分、バスは終点の石廊崎港口へ到着した。
終点なのでロータリー的なところへ停まるのかと思いきや、県道であっさり停車。
運賃を支払い降りると、バスはすぐに発車し道先の隧道へと入っていく。

「アレ??あのバスってここが終点じゃなかったっけ??」

意味もない思索を繰り返していると、私はポケットに何時もと違う違和感を感じた。
あるはずのものが、無い。そんなまさかとリュックをまさぐってみるが、無い。

「 あ……(゚口゚; 」

その疑念が確信に変わった瞬間、全身がゾワゾワし始め、気持ち悪い汗が滲み出した。


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iPhone、バスに忘れてきちゃった。

ブログ史上最大(?)の危機。終点から走り去ったバスに相棒を置きざりにしてしまった私は、
しばらくその場で呆然と立ち尽くしていた。絶対絶望過ぎて冷や汗が止まらない。

「マジヤバイぞオイ……!これからどうすんだよ……!」

旅程破綻どころか、下手すりゃ"オワタな展開"へ発展しても可笑しくないフラグがビンビンに立っているw
でも、そうはさせない!平静さを取り戻した私は、ひとまず石廊崎港口のバス停にヒントを求めた。
隧道の奥へ走り去った、あのバスの正体を明らかにするために!!(→次回へ続く)

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南伊豆東海バスと石廊崎

「伊豆半島日帰り縦断 2/3 (石廊崎港口~石廊崎~石廊崎港口~下田駅)」

[2015/11/30]

熱海から鉄道を辿り、下田からローカルバスに乗って伊豆最南端へ到達した私は、
バスの中にiPhoneを忘れるという、大道芸人レベルの失態を犯してしまった。
「石廊崎港口」の行き先を掲げていたバスは、終点から何処へ走り去ってしまったのか??

とにかく何かしらのヒントを得ようと、バス停の時刻表を見てみることに。
バス停に記載されている情報から、まずは以下の事実が明らかとなった。


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・石廊崎港口から先もバス路線は延びており、中木へ向かう便と吉祥へ向かう便が存在する。
・さっき走り去ったバスは10時38分発の吉祥行きである。


……なるほど、大体状況はつかめた。つまり、バスの系統が二つに分かれていたのだ。

詳細な事情は定かではないが、実質的な直通運行なのに、諸々の事情から、
行き先と系統を別々にして運行している便が鉄道・バスともにいくらか存在する。
さっき私が下田から乗り込んだバスは、「下田駅発石廊崎港口行き」の系統を全うした後、
終点到着と同時に石廊崎港口を起点とする「吉祥行き」となって、そのまま出発していったのだ。




「下田駅発石廊崎港口行き→石廊崎港口発吉祥行き」(つまり実質的な石廊崎経由吉祥行き)

ここ一帯のバス路線は、国道136号を突き進む路線と、県道16号を経由する路線(石廊崎線)に大別される。
石廊崎線は1日14~16本あるが、このうち石廊崎港口を経由し、中木・吉祥まで行く便は1日1~2本しかない。
殺人的な本数の少なさだが、それだけ需要がないということなのだろう。利用するのはバスマニアぐらいかもしれない。

何はともあれ、バスの正体はわかった。あとは、あのバスが港口へ戻ってくるのかどうか、だ。
終点到着時に運転士が車内点検をすると思うので、私の置き忘れたiPhoneに気づいてくれればいいのだが。
気がつくと、誰もいないと思ってた隣接の施設から地元のおばちゃんが出てきて、
バス停の前で困る私に声をかけてきた。そこで私は、物乞いの如き口調で助けを求めた。


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「すいません、バスに携帯を忘れてしまったんですよ。さっきのバスなんですけど……」
「それはマズイねぇ。取り敢えず電話したほうがいいね、どれどれうちの電話持ってくるから」
「ありがとうございます!本当に助かります!」

電話を貸してくれた地元のおばちゃん、マジ天使。もうなんもいえねえ(汗)。
ということで、私はバス停に記載してある東海バスの電話番号に電話をかけた。
若干テンパってはいるが、何事も無く冷静に状況を説明する。
必死に問い合わせた結果、さっきの直通バスの正体が完全に明らかとなった。

「10時38分に石廊崎港口を発する吉祥行きは、吉祥へ到着した後、
下田駅行きとして11時51分に石廊崎港口へ戻ってくる」


よかったーーーー!一時間後に戻ってくるよーーーー!さっきのバス!(涙目)




「一日一本しかない吉祥発石廊崎港口行き」(石廊崎港口到着の後は下田駅行きとなる)

先程の吉祥行きバスは、往路と同じ経路で元来た道を戻ってくることが判明した。
時間に合わせて戻ってくる復路のバスに乗れば、万事解決だ。さすがにパクられてはいないだろう。

「バス来るまで時間まだあるねぇ。どうせなら岬行ってきなよ。歩いてすぐだから。」
「ご迷惑おかけしました!本当にありがとうございました!」

親切すぎる神対応おばちゃんの後押しで、私は予定通り港口から石廊崎へ向かった。
旅程破綻(と個人情報流出)の危機を逃れ、路上で有頂天になる私は滑稽だっただろう。
気がつきゃ、曇っていた空も晴れ渡っている。旅運は確実に上向きへと向かっている!



・石廊崎港口~石廊崎(徒歩)
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石廊崎港口のバス停から、まずは石廊崎港へと延びる道を辿っていく。
海の近くなのに野山がひしめいており、平野民が想像しがちな景観とは全く異にしている。
九十九里浜や茨城沿岸に慣れ親しんできた身としては、こういう風景はなかなか新鮮に見えた。

道脇に商店が増えてくると眼前が開けてきて、小さな港が見えてくる。石廊崎港だ。


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秘境的な印象を持っていた石廊崎だが、立派に観光化されているらしい。
港に着くと小さな遊覧船が乗り場に到着し、観光客がドッと降りてきた。
私は遊覧船が目当てではない。公共交通と自らの足で最果てに到達し、景色を眼に刻む。
言葉にすると陳腐だが、それ自体が目的であり、全ての動力源なのだ。


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石廊崎港からは、港脇から延びる参道を上って岬の先っぽを目指す。
所要時間は徒歩20分、距離にして約1kmと、それなりに手堅い道のりだ。
キツイ上り坂を上っていると、眼下の港から遊覧船が発していくのが見えた。


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上り坂をひたすら上っていくと、道は岬上へ達する。
岬の上にはテーマパーク施設が営業してたらしく、建物もそのまま残っているようだ。

房総半島突端の寂れぶりも相当なものだが、伊豆半島の突端も必然的に寂れてしまったのだろうか。
昭和のまま取り残されたテーマパークの脇に、宗教のポールが立っている。
世界平和というよりホラーな雰囲気を醸し出してるのだが…(苦笑)


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廃墟と化したテーマパークの脇を通り抜けると、神社の鳥居とトイレがあった。
狭くなった道を進み、下りへ転ずる地点で岬らしい岬の景色が開けてきた。大海原も見える。

有名どころの岬には大体灯台が建っているが、石廊崎もこじんまりとした灯台が設けられている。
名を「石廊埼灯台」。灯台には近づくことができず、内部見学もやってない。
灯台を尻目に道は先へと続いている。この辺りで周囲の景色が一気に開けた。


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「何だか思ってた以上に良い感じじゃないか……!」

右手に現れたのは、人工物の介在しない岩肌の姿。
原始の力が織り成す地形美だ。


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「石廊崎、到達!!」

参道は終点に達すると、神々しい伊豆の最南端が姿を現した。
事前に下調べはしていたが、思ってた以上の尖り具合だ。



・石廊崎
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断崖絶壁、それもゴツゴツした岩肌の中に、伊豆半島の南端はあった。
岬の前に広がるのは、ただっ広い大海原に小さな船影たちだ。
石廊崎は海の境界となっており、西は駿河湾で東は相模湾となる。
太平洋とフィリピン海を分かつ境界でもある。

何だか、昔の王道RPGゲーム(ドラ○エとか)のワンシーンに出てきそうな光景だ。
あの岬の突端に神に選ばれし伝説の剣が刺さっていても可笑しくない、絶好のロケーションの良さ。
岩肌に打ち寄せる波の音が、最果て旅情を掻き立てる。悪天候の方が様になりそうな険しさだ。


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神々しい岬突端へ眼がいってしまうが、周辺もまたゴツゴツした断崖に覆われている。
人を生易しく受け入れる場所が一切存在しない。断崖がそのまま海岸線に突き刺さっていて、
その様相が見渡す限り延々と続いている。伊豆南部がここまで鬼畜な場所だとは思ってもみなかった。


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今まで訪れた岬の中でも、石廊崎は立地・眺め・シチュエーション、全てが魅力的だ。
竜飛岬のような雄大さや、最北の宗谷岬のような圧倒的達成感があるというわけではないが、
港から参道を上ってきて到達寸前のところでヌッと姿を現す石廊崎の姿は、
最果てを目指す一行程として興奮した。手堅い達成感と、ドラマティックな感動があった。

「秘められし力を覚醒し、俺は真の勇者になる!」そんな(イタイ)言動が口に出そうな絶景が眼の前にある。
今にも選ばれし勇者がやってきて、秘められし能力の覚醒フラグをおっ立てそうだぜ!


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岬の突端へ行くと石碑が設けられていて、ここが正真正銘の伊豆最南端であることを示していた。
到達の余韻に浸っていると、港から出ていた遊覧船が眼の前を横切っていく。

iPhoneをバスに忘れてしまった男が仁王立ちする姿は、さながら滑稽に見えただろうね。
余韻に浸っていると時間が迫ってきた。勇者の覚醒フラグとか言ってる場合じゃないw
iPhone紛失の"オワタフラグ"を、俺はこれから覆さなければならないのだ!


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石廊崎の先っぽから振り返って撮った画像がコレ。断崖にへばりつくようにして神社の祠が建っている。
今にも崖からポロっと取れてしまいそうな、鬼畜な立地条件。
よくあんなとこに建てたもんだ。

もうちょっとだけ絶景を眺めていたいが、復路のバスだけは絶対に逃してはならない。
ギリギリまで滞在した後、急ぎ足で石廊崎をあとにした。



・南伊豆東海バス石廊崎線 [石廊崎港口~下田駅]
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「先ほどはすいませんでした!」

元来た道を戻り、神対応おばちゃんの助言で県道のバス停で待つこと数分、目当てのバスはやってきた。
一日一本しかない吉祥発石廊崎港口行きだ。このバスは石廊崎港口で下田駅行きになる。
バスに乗り込むと、顔を覚えていた運転士さんが「コレでしょ??」と例のブツを取り出して見せた。
どうやら、私のiPhoneは無事だったようだ。運転士さん、最高にグッジョブだぜ!

「おやおや、なにやら大変だねぇ……」

乗り込んだ乗客は往路で一緒だった老夫婦もいる。遊覧船に乗ってきたのだろう。
安堵しているうち、あっという間に道は進む。休暇村に着くと老夫婦が降りていき、乗客は私一人だけとなった。


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iPhoneは旅行記作成に必須のツールだ。随所で車窓を撮影し、コイツに現況を記録することで当ブログは成り立っている。
何はともあれ無事でよかった。まだ一年しか使ってないからなコイツ。馬車馬の如く使い倒してやんよ!
国道に入っても、乗客は私一人のまま。やがて、定刻通りバスは下田へ到着する。
グッジョブ運転士さんにお礼を述べた後、バスを降りて下田駅へ向かった。

石廊崎の次は天城越えだ。天城峠には、あの有名な"隧道"がある(もちろん旧隧道のほうです)。
次回!河津から路線バスで天城峠を越え、駿豆線に乗って伊豆半島を脱出する!

天城越えの道のり

「伊豆半島日帰り縦断 3/3 (伊豆急下田~河津~二階滝~天城峠~修善寺~三島)」

[2015/11/30]

iPhone忘れが引き起こした"オワタフラグ"を覆し、私は石廊崎から下田駅へ帰還した。
旅程の狂いを覚悟したが、iPhoneを忘れたバスがたまたま旅程通りに乗る便だったため、
予定通り旅を続行する。これから行くのは、伊豆半島縦断の中で最も歴史の深い路だ。



「下田街道全区間(下田~三島)」

伊豆半島の中央部は天城山脈がみっちりと連なっていて、半島を南北に分断していることは前置きでも述べた。
この厳しい土地事情から、伊豆の南北陸路は他の地域と比べて整備が致命的に遅れたといわれているが、
それでもなお半島唯一の幹線縦断道路として江戸時代から君臨していたのが、三島と下田を結ぶ下田街道だ。
東海岸の道路が開通してからは動脈としての役割を譲ったが、伊豆南北縦断路の元祖はこの下田街道である。

復路で決行する行程のコンセプトは、下田街道をメインとして公共交通で伊豆中央部を縦断するというものだ。
道中にはかの有名な天城峠が待ち構えており、峠付近に限りバスを降りて自らの足で「天城越え」をしたいと思う。
下田街道は下田からだと公共交通路線が通じてないため、まずは下田から伊豆急に乗って河津へ向かおう!



・踊り子108号 [伊豆急下田~河津]
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13時02分に発する踊り子108号は、伊豆急下田を起点として東京へ直通で向かう特急である。
後発の鈍行だと河津での路線バスの接続が悪いため、特急料金がかかってしまうのはしょうがないが、
やむなく特急に乗ることに。一つのルート開拓のためには、短区間だけ特急でもやむを得ない選択だろう。

特急踊り子といえば今も昔もこの白地に緑の国鉄車で、世代交代が激しい特急の中でも往年の風格を放っている。
上野東京ラインが開通してから、踊り子は臨時特急として常磐線の我孫子にも乗り入れるようになった。
大動脈東海道で未だに生き残って走り続けている、定期の国鉄特急。なかなか希少な存在だ。


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日中出発の便なので車内はガラガラ。定刻が来ると列車はひっそりと発車した。
昼食を食べる時間が他にないので、河津に着くまで下田駅で買った駅弁を食す。

その名も「ひれかつ弁当」。2005年に発売開始された弁当で、魚介系が多い伊豆のラインナップの中でも、
コレは貴重な肉メインの弁当。非常にシンプルな構成だが、個人的には奇をてらわない方が好きだ。
カツはやわらかく、キンキンに冷えてはいるが普通に美味しい。腹減ったら肉食うのが一番!


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下田を出た踊り子108号は、長いトンネルを潜った後、間もなく河津へ到着する。
降りたのは私一人と地元客が数人のみ。河津からは東海バスに乗って下田街道へ入る。
ホームを発していく列車を撮影した後、私は駅ロータリーにあるバスターミナルへ向かった。



・南伊豆東海/新東海バス天城線 [河津駅~二階滝]
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南伊豆東海バスと新東海バスが共同運行している天城線は、河津から天城峠を越えて修善寺へ向かうバス路線だ。
区間運行の便もあるが、河津~修善寺の全線を走りきる便は現時点で1日10本。それなりに本数はあるようだ。
幾多の伝説を刻んできた下田街道を辿る路線なだけに、地元需要の他に観光としての需要も手堅く持っていて、
天城線内で自由に乗り降りできるフリー切符「天城路フリーパス」も販売されている。

天城線は、少し前まで昔のボンネットバスが走っていたというから驚きだ。しかも定期の観光便で。
ボンネットバスというのは、トトロや三丁目の夕日で出てくる、前側が出っ張ったクラシックバスのことだ。
平成生まれには、ボンネットバスは"懐かしい"というよりも"完全にファンタジー"だが(バスガールも含めて)。

13時35分発の修善寺駅行きの乗客は、始発の時点で私含めて3人のみ。日中の便だからこんなものだろう。
天城峠の旧道を南側から最短で越えたい場合は、峠一歩手前の二階滝というバス停で降りればいい。
バスは河津駅を出ると県道を辿るが、山々が迫ってきたところでメインの下田街道へ入った。


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下田街道もとい国道414号における最大の見せ所といえるのが、この「河津七滝ループ橋」だ。
正式名称は「七滝高架橋」といい、峠越えまでの高度を一気に稼ぐために建設された巨大橋梁である。
昔この区間は山の中腹をうねるように道が敷かれていたというが、78年に起こった地震で道路が寸断してしまい、
その代替として新たにループ橋を建てて国道に昇格させたという。竣工は81年。土木学会田中賞も受賞している。

巨大ループ橋梁が醸し出す存在感は伊達ではなく、バスの中からでも圧迫されるような迫力が味わえる。
橋上へ突入すると小さい円を描き、低速を保ちながら二回転して坂を上っていく。


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何ともいえない光景だな・・・!

大都会東京にありそうなゴッツイ巨大橋梁が、歴史深い天城路で粛々と稼動する光景に、地味に萌えた。
河津七滝ループ橋を過ぎるとバスは山の中へと入っていき、カーブの連続する山道を進む。
「ここは何処なんだ??」といいたくなるような深い谷が広がっている。


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天城山の隙間をひた走っていくバス。伊豆中央部の山脈真っ只中ってわけだ。
この先には有名な天城峠がある。現在、天城峠付近の道は現国道と旧道に分かれていて、
現国道はメインルートとして、旧道は観光道として整備されている。私が行くのはもちろん旧道の方。

天城峠の整備された旧道は6km近くもあり、現国道の合流点から全線突破しようとすると時間がかかる。
そこで今回"ラクをしたかった"私は、峠付近を出来る限り最短距離で突破するルートを考えた。
掲げるコンセプトが壮大な割りに、やろうとしてることが根本的に貧弱であるw


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14時16分、天城線バスは定刻通り二階滝バス停に到着した。
二階滝からは隣接する休憩拠点から遊歩道が延びており、国道414号の旧道に繋がっている。

遊歩道から旧道に突入し峠の方へ進んでいけば、あの有名な天城隧道が口を開いているはずだ。
二階滝から天城峠の頂へ達するまで、距離にして約2km。そんなに大した距離ではないが、
探索時間は限られてるので早めに進んでいこう。



・二階滝~天城峠(旧道)
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二階滝の休憩施設(トイレ)脇を見ると観光案内板があって、そこから遊歩道が延びていた。
まずは遊歩道を上って、国道の旧道合流点へと向かう。

天城峠のブランド力は伊達ではないらしく、すっかり観光化されていて行楽客が多い。
鬱蒼とした遊歩道を上っていくと、旧道との合流点に問題なく行き着いた。
合流点からは、ひたすら旧道を上っていくだけだ。


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二階滝から天城隧道へ達する中間付近で、旧道は苔むしたコンクリート橋を渡る。
その名も「寒天橋」。石川さゆりの「天城越え」の歌詞でも出てくる、有名な橋だ。
寒天橋の脇にはバス停があって、橋上に季節限定運行のバスが停まっている。

季節限定運行のバスを使って寒天橋から峠の頂へ向かってもよかったが、
シビアな乗り継ぎを要求されるし、天城峠に乗り鉄の小細工を持ち込みたくなかった。
徒歩で南側から天城峠・天城隧道へ向かうなら、二階滝から最短で行くルートがベターだろう。


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紅葉も冴え渡っている天城の旧道。通行人は思った以上に多い。
自転車乗りやランナーや部活帰りの学生、バイクや一般車などなど、多種多様。
そこはやっぱり天城峠ブランドなのかもしれない。旧道は車でも通行可能となっており、
愛車で走破したい人も多いのだろう。旧道ではあるが、一応ここは現役バリバリの道路なのだ。

道は相変わらず深い山の端を縫うように延びており、息を切らしながら順当に進む。
「峠はまだなのか……!」心待ちにしながら歩くことしばらくして、
次第、眼前に絶望的な山壁が聳え始めた。このすぐ先に、超有名隧道がある…!



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来たぞ!!天城隧道!!

石廊崎に続き、今回の旅でお目当てにしていたもう一つの物件に、ようやく行き着く。
全国のトンネルの中でも、恐らく世間的に最も有名な隧道の姿がそこにあった。
かつて伊豆半島の南北縦断路を担った、偉大なる"穴"のお出ましだ。



・天城隧道(天城山隧道)
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天城隧道。石川さゆりの演歌で有名なこの隧道は、正式名称として「天城山隧道」と名乗っている。
全長445.5mの石造隧道であり、竣工は1904年(明治37年)。現在日本に現存する中では最長の石造道路隧道である。
石造としての最長ブランドも掲げながら、隧道として初めて「国の重要文化財」にも指定された第一級の物件なのだ。

現在は新しく開通した新トンネルが天城峠のメインルートとなっているが、新トンネルが開通したのは70年代に入ってからで、
それまではこちらの天城隧道が明治~大正時代からずっと活躍していた。開通から既に110年のときが経過している。
隧道開通以前は生死を分かつほどの峠越えを強いられていただけに、この一本の隧道がもたらした功績は偉大だった。

古来掘られたトンネルの特徴の一つに「坑門」がある。坑門というのはトンネル入口に据えられた構造物のことだ。
中には装飾的な意味合いの濃いモノも多いらしいが、建設者の威厳をもって隧道の名が刻まれる「扁額」や、
坑門を支えるために脇に据えられた「翼壁」、雨水をきるために入口上部に設けられた「笠石・帯石」など、
機能性を含んだデザインとなっている。通行人を受け入れるトンネルの"顔"みたいなものだろうか。


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まるで古代遺跡のような風格。(隧道名が右書きなのがまたたまらない)

近代式トンネルの基本的な意匠は元々イギリスから持ち込まれ、隧道建設の技術とともに輸入されたらしい。
後に一つの様式美となり独自の発展を遂げた隧道の意匠は、地域によって大きく異なってくるようだが、
高度経済成長を皮切りにして、急速的な技術の発達ともに簡素なスタイルへと変化していった。

現在一般に見られるトンネルは「扁額」以外に装飾を限りなく削ぎ落としていて、あまり面白味がないが、
古来の隧道は鑑賞する楽しみが沢山あると思う。カッコイイと思う。
RPGゲームの迷宮ダンジョンに入っていくような気分だ。


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隧道に入ってみると独特の雰囲気にのまれそうになるが、中は照明があり徒歩でも全く問題ない。
昔の人はこうして隧道の暗がりの中を自らの足で歩いたのだ。昔の交通スタイルに思いを馳せてみるのもいい。

天城隧道はひたすら真っ直ぐ山脈をぶち抜いており、入口から向こう側の出口が見える。
暗がりの中を歩くうち、向こう側から轟音が聞こえてきた。車が入ってきたのだろう。
しばらくするとヘッドライトが間近に迫ってきて、白い軽車が私の横を走り去っていった。
見た感じ、この隧道は車の行き違いはほぼ不可能だと思われる。鉢合うと修羅場になるかも。


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500mほど突き進むと、やがて北側の出口に出た。隧道の前はちょっとした園地になっている。
トイレと車を停めるスペースがいくらかある。休日は観光客で賑わうのだろう。

すっかり観光化されてはいるが、古きよき隧道としての威厳が往時のまま残っていて楽しめたぞ。
保存状態が良く、観光誘致の飾り付けがされてないのが好印象。交通物件は素のままの方が美しい。
しばらく坑門を鑑賞した後、キリのいいところで隧道横から下る山道へ入った。


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隧道先から続くダートの旧道を制覇しても良かったのだが、それだと次乗るバスに間に合わない。
旧道を進む場合は大きく迂回した後に現国道へ合流となるため、思った以上に所要時間がかかってしまうが、
隧道入口すぐのところから延びる山道を辿れば、ほぼ直下にある現国道のバス停に真っ直ぐ行くことができる。

バスの時間が迫っているので、半ば突っ走る勢いで山道を駆け下りていく。
標高80mほどの高低差を下ると、道は新トンネル入口の脇に出た。
現国道出てすぐのところに天城線のバス停がある。ここから再びバスの世話になるぞ!



・南伊豆東海/新東海バス天城線 [天城峠~修善寺]
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14時54分に天城峠を発する修善寺行きは、ほぼ定刻通りやってきた。
冬至に近い今日、日が暮れる前に半島を脱するには、バスですぐ北上する必要がある。
天城峠から終点修善寺までの所要時間は50分弱。何だかんだ言って馬鹿にならない道のりだ。

峠は越えたので、下田街道はひたすら下りが続く。辺りは相変わらず深い山の中。
浄蓮の滝のバス停では観光客が降りていった。浄蓮の滝も「天城越え」の歌詞に出てくる景勝地の一つだ。


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眠り込んでしまったため、車窓はあまり記憶が無い。早朝からぶっ続けで色々やってきたのが裏目に出たか。
バスに揺られながらウトウトしてるうち、気がつくと既に天城山の中を抜けていた。

天城峠から下田街道を忠実に走り続け、バスは終点の修善寺へ到着する。
修善寺からは鉄道が街道と並行して走ってるから、一行程として有難く利用させて頂こう。
伊豆中央を公共交通で突破する、最後の切り札。その名も駿豆線(すんずせん)!路線名が可愛い。



・伊豆箱根鉄道駿豆線 [修善寺~三島]
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伊豆箱根鉄道駿豆線の歴史は深く、下田街道を取り巻く中伊豆の発展とともに生きてきた鉄道路線である。
現行の駿豆線の大元となる豆相鉄道が開業したのは、何と19世紀末期のことであった。
1898年に開業し、後に起点三島から中伊豆の中心地となる修善寺まで延伸。
これ以後、駿豆線は地元需要だけでなく観光需要も伸ばし続け、県内屈指の優良路線となっている。

古くは直通で国鉄の列車が乗り入れていた駿豆線。昔は常磐線から乗り入れる急行もあったという。
現在は東京からの特急「踊り子」が乗り入れるのみで、他は全て伊豆箱根鉄道の鈍行だけだ。
列車の本数は多く、大手私鉄も顔負けの賑わい振りを見せている。運賃も比較的安い。

地元では駿豆線のことを「いずっぱこ」と呼ぶらしく、駿豆線と呼ぶ人はほとんどいないのだとか。
切符を買って学生と混じりながらホームへ向かうと、独特の顔つきをした列車が停まっていた。
15時50分発の三島行き鈍行だ。三両編成のワンマン列車で、水色の車体に太い青帯を巻いている。
今時珍しいボックスシート主体だが、学生で一杯なのでドア脇でやり過ごすことにしよう。


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若干ヘロヘロになりながら眺める駿豆線の車窓。夕暮れの中でボンヤリとしているが、
田園や住宅の中を走る一方で、遠くに富士山が霞んで見えるのが印象的だ。
住宅~田園~山~川~海、土地の全ての要素を取り巻きながら、満杯の乗客を乗せて列車が走る。
当たり前のことだが、それ自体が素晴らしいと思うし、地方の鉄道として最良のかたちなのだと思う。


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16時24分、列車は終点の三島へ到着。これで伊豆中央部の縦断ルートは無事完遂だ。
観光としての役割に特化した伊豆急と、地元密着の鉄道として繁栄を遂げた駿豆線。
同じ伊豆半島を走る両私鉄は、実に対照的だった。寧ろ、日帰りで一気に乗り通して良かったかもしれない。

三島駅構内は立ち食いそば屋があり、ノスタルジックな雰囲気が漂っている。
色々あって深刻なトラブルも犯してしまったが、伊豆の日帰り旅はこれにて終了。
駿豆線に別れを告げた後、何事もなく新幹線に乗って帰路に着いた。

・旅の総運賃:13710円(JR運賃+私鉄運賃+バス運賃+特急券)
・乗った乗物の数:鈍行3本+バス4本+特急1本+新幹線1本
・総距離/所要時間:約150km/約8時間(熱海~三島)


一時はどうなることかと思ったが、「結果的に良しか!?」とオワタフラグを覆した今回の旅。
致命的トラブルが、逆にブログのネタ的に美味しくなってしまったという結果となった。
何はともあれ、旅を救ってくれた石廊崎の救世主おばちゃんに感謝だ。マジリスペクトっすよ!(by DA○GO)
(完結)


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